<2024.02.03>起稿
季節は2月、如月(きさらぎ)に入った。その語源には諸説あるが、最も有力なのが「衣更着(きさらぎ)」が転じた説。厳しい寒さゆえ重ね着をする季節(衣を更に重ねる)のこと。他にも、陽気が更に来る月だから「気更来」、春に向けて草木が生え始めるから「生更木」などがあるという。ともあれ、各月を季節感のある言葉で表現してきた日本語ならではの美しい言葉であることに変わりない。▶5年前の如月6日、筆者の父が逝った。「親孝行したい時には親はなし」、もっといろいろしてあげたかった。父を思うにつけ、筆者の中にひとつの後悔が過る。母が45歳で逝った時、父は49歳。筆者は20歳、妹は15歳。父は仕事をしながら、母の看病と、二人の子どもを守るために一人必死に戦っていた。▶医師から母の余命を告げられた時、父が「しんどいなぁ」と呟いた。その一言に父の気持ちぜんぶが詰まっていたと、今になれば分かる。筆者は20歳といってもまだまだ子ども。父に守られ、父の戦いのパートナーにはなり得ていなかった。あの時少しでも父と同じ気持ちになれていたら。もっと父の気持ちを受け止め、話しを聞いてあげたかった。▶浜田省吾は「車の窓に映ってるおれの顔 彼に似てる Father's son 何を手にしたいの」※と歌った。最近、話し方や雰囲気が父に似て来たと家族から言われる。▶父から受け継いだものは何か、明確には分からない。ただ今も筆者の中に生きているのは、人を大切に人のために一生懸命に尽くす父の姿。「手にしたいもの」を「目指す生き方」に置き換えれば、筆者が目指したいものは、父のように人を大切に、人のために尽くす生き方。あの父と母の下に生まれてよかった―命日が巡りくるたびにそう思う。(虹)2024.02.03-
(富士山と山中湖/2023年3月筆者撮影)
※「DARKNESS IN THE HEART (少年の夏)」