世にもあいまいなことばの秘密 

川添 愛 /ちくまプリマー新書442

2023年12月7日刊

 

■内容紹介(筑摩書房)

「この先生きのこるには」「冷房を上げてください」言葉には、読み方次第で意味が変わるものが多々あり、そのせいですれ違ったり、争ったりすることがある。曖昧さの特徴を知り、言葉の不思議に迫ろう。
 

■目 次
1 「シャーク関口ギターソロ教室」―表記の曖昧さ
2 「OKです」「結構です」―辞書に載っている曖昧さ
3 「冷房を上げてください」―普通名詞の曖昧さ
4 「私には双子の妹がいます」―修飾語と名詞の関係
5 「政府の女性を応援する政策」―構造的な曖昧さ
6 「二日、五日、八日の午後が空いています」―やっかいな並列
7 「二〇歳未満ではありませんか」―否定文・疑問文の曖昧さ
8 「自分はそれですね」―代名詞の曖昧さ
9 「なるはやでお願いします」―言外の意味と不明確性
10 曖昧さとうまく付き合うために

 

■著 者

1973年生まれ。九州大学文学部卒業、同大大学院にて博士号(文学)取得。2008年、津田塾大学女性研究者支援センター特任准教授、12年から16年まで国立情報学研究所社会共有知研究センター特任准教授。専門は言語学、自然言語処理。現在は大学に所属せずに、言語学者、作家として活躍する。 著書に『白と黒のとびら』『自動人形の城』『言語学バーリ・トゥード』(東京大学出版会)、『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』朝日出版社、『コンピュータ、どうやってつくったんですか?』(東京書籍)『ふだん使いの言語学』(新潮選書)など。

 

■読後感

 日本語が持つ特性という側面があるが、私たちがいかに日常的にあいまいな言葉を使い、ふわっとした言葉のニュアンスの中で生きていることか。私自身も心当たりがある、避けようと努力している(簡単に避けられるものではないが)いくつものあいまい表現をピックアップし、そのより正しい使い方、表現の仕方を提示し解説する。

 例えば、日常的に接することが多いと思われる表現をひとつ。スポーツの世界大会で、観ていた日本人サポーターが観戦後に自分たちの座席エリアをきれいに掃除するシーンが報道された時に「日本人はマナーが良い」と言われることがたびたびある。それを聞けば、日本人みんながマナーが良いと取れ、こちらも褒められた気持ちになる。しかし、厳密に考えれば、ここで言う「日本人」とは「観戦後にその場を掃除していた日本人サポーター」のことであり、あくまで「日本人の一部」。日本人の中には当然マナーが悪い人もいる。したがって、「日本人みんながマナーが良い」とは少々言い過ぎで、こうした目の前の一事例を見て、ついついそれを全体に展開してしまう考え方の癖がそこにある。

 こういった事例を多数紹介している。私たちも日常的に使い得るこうした表現を、ちょっと立ち止まって検証してみるには最適な一冊。