「CA」とは和製英語「キャビンアテンダント」の略で、主に旅客機で接客サービスを行う乗務員のことを指すのが一般的。英語では「フライトアテンダント」や「キャビンクルー」と表現するようだ。▼時として人が発する声にその人の思いや決心を感じる場面が確かにある。1月2日に羽田空港の滑走路で日本航空と海上保安庁の航空機が衝突、炎上した事故で、日航機の乗客、乗員379人が無事脱出した。乗客が撮影した機内の映像がニュースで報じられている。そこにはCAが「荷物は持たないで!大丈夫!落ち着いて!」と乗客に強く呼びかける声が収録されている。必死の中にも冷静な響き。生死に関わる危機に直面した時に語数の多い敬語は不要。最重要なことを、短い言葉、大きな声で呼びかけてこそ、恐怖の底に落とされた乗客の気持ちを鎮め、次の行動に向かわせることができよう。▼この機内での対応を、元・日本航空の客室乗務員として30年間勤務し、チーフも務めた方が解説していた。その方曰く「『私は何をなすべきか』とCA一人一人が考えたことの成果が出た」と。そして脱出のカギを三点挙げる。①パニックコントロール、②非常扉を開く判断、③荷物を置いた乗客。これらをほぼ同時に、瞬時に成し遂げたのがCAの呼びかけと行動だったと。▼「前に来てください!みなさん!」とのCAの呼びかけも収録されている。窓の外には炎でオレンジ色になった煙が見える。全8か所の非常扉のうち、開けられたのは機体前方の2か所と最後尾の1か所の合計3か所のみ。目の前の扉が使えないと分かったら、それを何とか開けようと考えるより、他の扉を使うことを即座に判断した。機長と連絡がつかなかった機内最後尾にいたCAは、自らの判断で最も近い非常扉を開放した。「荷物、持たないで!」とのCAの呼びかけと同時に、一人の乗客が「荷物、出すな!」と他の乗客に呼びかける声も残っている。CAの呼びかけは乗客を動かした。▼再びその方曰く「海外メディアなどはこの脱出を『奇跡』と報道していますが、これは『奇跡』ではなく日頃の訓練の『積み重ね』であり、常に乗客に対して自分たちはどうあるべきか、という『心づもり』から出た結果です」―CAの行動に対しこれほどの賛辞はないと筆者は思う。▼どんなに訓練を積んでも、それがいざという時に発揮されないこともあるだろう。それをあの状況で発揮したことはやっぱり「奇跡」だったと、浅はかな筆者は当初そう思った。そうではない。預かるのは人命。発揮されないことがあってはならない、発揮して当然だからこそ、絶対に犠牲者を出さない「心づもり」で、無数の訓練を黙々と「積み重ねてきた」のである。それらが結晶となって発せられた呼びかけに言霊が宿らないわけがない。今こうして書いていてもまた涙が溢れてきた。CAのみなさん、ありがとうございました。 (虹)2024.01.07-
(2017.12.17 筆者撮影)
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ANN【スーパーJチャンネル】
(2024年1月5日放送)