<2023.12.25>加筆

<2023.11.21>加筆
<2023.11.09>

 

(「君が好きさ」を歌う松山千春/1982年)

 

私が中学時代(1980~1982年度)の教室には松山千春ファンがたくさんいた。

 

ぱっと浮かぶだけでも、美和ちゃん、里香ちゃん、奈穂美ちゃん、忠彦君、信之君、仁君、かなた君…。松山千春のシングルやアルバムが出るたびに休み時間にみなで輪になって話した。

当時、音楽業界はニューミュージックが主流とは言えば主流で、ザ・ベストテンにも多くランクインしていた。また、松山千春も全盛期だったこともあり、そんな現象が起きていた。

その当時までにリリースされていた松山千春全楽曲の中でどれが一番好きか?-そんなことも話した。

 

美和ちゃんと里香ちゃんが「かなたはどの曲が一番好き?」と聞いてきた。「俺は『君が好きさ』」―決して美和ちゃんか里香ちゃんが好き、ということではない。

そう言えば、当時、クラスでは女子たちも男子の下の名前を呼び捨てにしていたのを、今書きながら思い出した。

 

(同上)

「君が好きさ」(1982年LIVE)


中学生の私は、当時松山千春の「君が好きさ」が一番気に入っていた。アルバム『こんな夜は』、「風をうけて」ツアー、「真駒内5万人ライブ」で歌われていた「君が好きさ」…それぞれ歌い方も違って、どれも好きだった。

 

「風をうけて」「真駒内」での弾き語りを真似て、自分で何十回となく弾き語りした。

 



今でも「君が好きさ」を弾き語ると、どうも胸の真ん中あたりがくすぐったくもじもじした感覚を覚える。ひとえにあの中学時代のシーンを思い出すからだろう。

「君が好きさ」は1978年1月にリリースされたセカンドアルバム『こんな夜は』に収録されている。

 

 

歌詞は当時22歳のピュアな松山千春の世界そのもの。アレンジは清須邦義氏。聴いているこちらが照れ臭くなるようなピュア過ぎる内容。でもそれがよかったんだと思う。当時の楽曲はピュアなストレートさが多くの人々に受け入れられたと思っている。

 

2023年11月15日、相模女子大学グリーンホールでのコンサートで、フルバンドで「君が好きさ」を歌った。松山千春67歳、12月で68歳。

 

フルバンドで聴いたのはいつだったか記憶がない。しかも結局秋のツアーで歌ったのはここだけだった。68歳直前の松山千春が歌う「君が好きさ」、聴けてよかった。

「君が好きさ」

(1978年1月)

僕がとても好きなものは
青い青い空の色と
夏の風に全てまかせた 君の長い長い髪

いつも遠くから君のこと
みているだけの僕だけど
君が好きさとても好きさ
君の全て欲しいけど

僕がとても好きなものは
赤い赤いバラの花と
夏の風に全てまかせた 君の瞳 君の笑顔

いつも遠くから君のこと
みているだけの僕だけど
君が好きさとても好きさ
君の全て欲しいけど

いつも遠くから君のこと
みているだけの僕だけど
君が好きさとても好きさ
君の全て欲しいけど

君が好きさとても好きさ
君のすべて欲しいけど

 

1978年オリジナル



「君が好きさ」から約41年後の2019年10月、「お前が好きだ」がシングル「かたすみで」のカップリングとしてリリースされた。松山千春63歳。アレンジは夏目一朗氏。

 


今Repeat再生している想定先行編集、自作のプレイリスト『起承転結15』の中に収録している。既に10回は通しで聴いた。

 



私の中では、夏目一朗氏は「君が好きさ」を意識してあえてこういうアレンジにしたんだろうと思っている。「君が好きさー2019」的な。

爽やかで美しいアレンジ。加えて、その前段階のメロディも松山千春らしい哀愁を漂わせた美しさ。「美しさ」が共通するメロディとアレンジ。



タイトルは「君」が「お前」に置き換わり、「好きさ」は「好きだ」に表現的にパワーアップされた。「君が好きさ」よりもさらに少ない語数の「お前が好きだ」

どうあれ松山千春が作る歌詞の世界には違いなく、その時代や松山千春の年齢などを踏まえたそれぞれの世界だろう。歌っている内容や本質的なところは変わっていない。

ただ、同じ世界を歌っているのに、歌詞ひとつでまったく質が違ってしまった感がある。もちろん「君が好きさ」に見られるああいった歌詞表現を今も貫いて欲しいとは言わない。年齢や環境相応に変わっていくことを理解している。

 

ひょっとすると意識的にこういう歌詞内容にしたのかもしれない。

 

私の中では、どうやら41年経ったらピュアな気持ちの中の世界を飛び出して、夜のすすきのの街角に行ってしまったような感じがある。

 


「お前が好きだ」

(2019年10月)

お前が好きだ 何より好きだ
叫んでみれば 心は爆発だ

お前が好きだ こんなに好きだ
わかっているだろ お前だけが好きだ

おいでもっとそばに この胸のときめき
ふたりだけのために 月日は過ぎてゆく

お前が好きだ  死ぬほど好きだ
かわいい瞳に 見つめられりゃ終わり

まるで俺のために 生まれてきたようで
ふたりだけのために 月日は過ぎてゆく

お前が好きだ こんなに好きだ
かわいい瞳に 見つめられりゃ終わり

 

 


(関連付録)

松山千春は「私を見つめて」という曲を1978年に発表している。「君が好きさ」と同じく、同年1月25日リリースのアルバム『こんな夜は』に収録。

これもオリジナルを聴くたびに中学時代が蘇ってくる。私の中で好きな曲上位に入ることはないが、嫌いじゃない。この歌詞もやっぱり松山千春そのもの。それがいい。

「私を見つめて」から約37年後の2015年4月22日にシングル「Look  me」をリリースした。松山千春当時59歳。日英の違いはあるがタイトルは同じ「私を見つめて」

「Look me」はリリースされた時に聴いて以来まったくと言っていいほど聴いていなかったが、この稿を書きながら聴き直してみた。

キャリアを重ねるほど断片的な言葉を少なく置いていく作風が強くなっているように感じていて、この曲もそのひとつだと思っている。

 

ただ「Look me」、こちらが頑張って聴けば、年齢相応、時代相応のメッセージと松山千春の思いを受け取ることができる。

「私を見つめて」から「Look me」への経年変化、私の中ではこれはこれで受け入れられる。

 

「私を見つめて」(1978年オリジナル)

 

「Look me」(2015年)