(書籍)
自分のための人生を生きているか
「勝ち負け」で考えない心理学
加藤諦三
(かとう・たいぞう)
大和書房/2023年5月31日刊
■本書紹介(出版社)
誰の人生でもない一度きりの人生を、自分らしく生きるか、流されて生きるか。劣等感にさいなまれる日々から抜けだすための心の持ち方
競争意識のなかに自分を置き続ける、これまでの生き方を大胆に編み直していくために――
●競争意識が強ければ強いほど、最善よりも最高を選択しようとする。その結果、自己喪失に陥る。
●本当の自分というものを犠牲にして、人の期待にかなって気に入られようとする。それは、悩みに火をつけているような努力である。
●自分の注意が今、結果だけにいっていないか、その点を注意することである。
●真の生きがいを感じられない人は、『私は私、あの人はあの人』という自我境界ができていない。
●自分の人生は、誰のものでもない、自分自身のものだということを、私たちはいつも自分に確認しておく必要がある。
■著者プロフィール
1938年、東京に生まれる。社会心理学者。東京大学教養学部教養学科を卒業、同大学院社会学研究科修士課程を修了。早稲田大学名誉教授、ハーバード大学ライシャワー研究所客員研究員、日本精神衛生学会顧問。ラジオのテレフォン人生相談で、半世紀以上出演中。著作は文庫を含めると600冊以上、海外での翻訳出版されたものは約100冊、アメリカ、カナダ、ドイツ、フィリピン、韓国など世界中で、講義、講演を行なっている。外国の著作で日本語に翻訳したものは、40冊以上。
■もくじ
序章 自らの内に神をつくる
自分には自分の人生がある/大きな目標が見つからない時代/大思想家の毒にあてられるな etc.
第1章 比較する人は不幸である
自分を実際以上に見せようとする心理/他人を羨ましがるほど誤解が生じる/心理的に大人になりきれない人/結果重視の人は、劣等感に悩まされる etc.
第2章 私が私自身なら何を恐れることがあろう
なぜ嫌われるのが怖いのか/自分の限界を無視している人/人生を無意味にしない法則/「疑似自己」に安住してはいけない etc.
第3章 探し求めよ、自らの使命を
しい絶対的価値基準/死ぬことが怖い人は、生きることも怖い/生きがいが見つからない理由/孤独だと騒ぐ人は自己実現していない etc.
第4章 人間とはお互いの生を充実しあうもの
「馬鹿になる」ということ/神経症的非利己主義の人/人を愛せない人/心がふれあえる相手がいるか etc.
■読後所感
「50年以上続くラジオ番組「テレフォン人生相談」レギュラーパーソナリティを半世紀つとめる加藤諦三氏。昭和、平成、令和と、激動の時代の変化とともに人の悩みと向き合ってきた著者が、劣等感、苦悩、葛藤を乗り越え、誰のためでもない自分自身の人生を生きるための「心の持ち方」を解明する。目から鱗の一冊!」(大和書房プレスリリースから)
全編にわたり、「自分には自分の人生がある」「私には私の生き方がある」ことをまずは決心し、生活の場でその決心でことにあたるよう徹底して叫ぶ。
人生経験を重ね、無数の人々の悩みに向き合ってきた著者だからこそ、という面を認識し理解しているが、人間のタイプとその行動の結果を決めつけ、一般化し断じるところが多々見受けられるように思う。「そうは言いきれないだろう」「それだけじゃなくて、こういう見方もあるはず」と読んでいて思う。
しかし、とかく無意識のうちにも自分の気持ちや考え方に余計な鎧を纏わせ、フィルターをかけたりしているもの。そこを見つめ、少し凝りをほぐすにはじゅうぶん適した一冊。
著者が「おわりに」で述べている。
「健康に関する本は書店に行けば山ほどある。栄養のバランスに注意をする、適度な運動を心がけるなど、テレビでもどこでもいろいろといわれる。
それに比べると、生き方の違いが肉体的な健康にも大きく影響するという注意は少ない。免疫力を上げる食べ物の話はいろいろとある。しかし、生き方もまた免疫力に影響する。
要するに生き方は人間のすべてに影響する」(234㌻)
現代はストレス過多な時代。いくつものストレスが重なり、それが原因となって病を誘発し、命にかかわることもある。「キラーストレス」とはよく言ったものである。ストレスを感じるのは自分の心。心の在りようがストレス耐性を生む。その心の在りよう、気持ちの持ち方のひとつとして著者は「自分には自分の人生がある」「私には私の生き方がある」ことに目覚めよと主張する。
その主張に私も賛同する。そのことを心から実感して生きていけるなら、おそらくその人生は無敵であり、悠々とした日々だろう。