さだまさし全開 50周年盤 「なつかしい未来」栗山WBC監督も参加
2023年7月7日 読売新聞 東京夕刊
さだまさしがデビュー50周年を記念した新作「なつかしい未来」(ビクター)を出した。一見、逆説的なタイトルに、「バック・トゥ・ザ・フューチャーですよね。あの時、種をまいたから、今、この花に出会える。生きるって、そういうことばっかりじゃないですか」と、歌手人生への思いを込めた。(鶴田裕介)
2月には吉田政美とのフォークデュオ、グレープの新作を出したばかり。東海ラジオ(名古屋市)をキー局にした番組を持ち、全国ツアーの真っ最中と、71歳にして活動の勢いは衰え知らずに、加速している。「前作から4か月で次のアルバムを出すのは、人生でも初めてのことでしたね」。あまりのペースに、自分でも驚いている様子だ。
録音は4〜5月、発売は6月。かなりの綱渡りだったが、収録曲は“さだ節”が全開だ。「ドレスコード」は、SNSなどで発信される過激な言動を戒め、「心にもドレスコードは必要だ」と諭す。「私の小さな歌」はさだ自身の音楽人生をギターの伴奏で振り返っている。
「マイアミの歓喜もしくは開運」には、野球の「ワールド・ベースボール・クラシック」(WBC)で日本代表「侍ジャパン」を監督として世界一に導いた栗山英樹が、コーラスとセリフで参加した。3月に栗山がさだのテレビ番組に出演した際の会話を元に作った曲で、「現役時代から仲が良くて、金メダルを見せびらかしに来てくれた」。この曲をきっかけに、ソロ作の制作が軌道に乗った。
元々はソロ作の方が先に決まっていたが、今年1月までグレープの新作に没頭した。昨年、グレープの吉田と食事をした時、「吉田がちょっとやる気を見せた。それでグレープをやったんですよね」。
グレープの新作制作中に、ソロの作品名でテーマでもある「なつかしい未来」を思い付いた。「(1970年代に)解散した時は、70歳になった時に何をしているかなんて想像もしなかったんですが、吉田は『(さだが)50年頑張り続けたから、俺が帰郷できる』って言ってくれた。それは良かったと思うんですよね」
50周年記念のコンサートは大阪、名古屋、東京で4日ずつ。「しんどいんですよ。しゃべらなきゃもっと歌えるんですけど。それはさだまさしの場合、考えにくいんで」。ある夜はグレープで、別の夜は管楽器を交えたソロでと、各日異なる趣向を凝らしている。
写真=WBCにくぎ付けとなった。「(準決勝の)サヨナラの瞬間は漫画みたいでしたね。あんな脚本、編集者に渡したら突き返されますよ。ベタすぎるって」=今利幸撮影
さだまさし「マイアミの歓喜もしくは開運
~侍ジャパンと栗山英樹監督に捧ぐ~」ライブ・ショート