<2023.05.27>起稿

 

 

いつも気にかけていただき、松山千春の鉛筆画やうちわなどを送ってくださる方へ、そのお礼に中島みゆきのアルバム『世界が違って見える日』(2023年)と『LOVE OR NOTHING』(1994年)をお送りした。

 

 

とくに後者に収録されている「流星」を聴いていただきたいのもこのアルバムを選んだ理由。

 

アルバムリリース以来、初めて聴いた時とまったく同じ感動で現在も今日も聴ける曲。

 

中島みゆき「流星」


読みは「りゅうせい」

1994年10月21日発売のオリジナルアルバム『LOVE OR NOTHING』初収

 

 

2022年4月23日付の「Rolling Stone Japan」、音楽評論家の田家秀樹氏とのインタビューで、中島みゆきのプロデューサーで編曲家の瀬尾一三氏がこの曲について話していた。

 


(左:瀬尾一三氏/田家秀樹氏)


瀬尾:彼女はこの曲が結構好きなんです。各ツアーの中に入っていると思うんですけども、結構歌っているんですよね。
田家:歌っていて楽しそうですもんね。
瀬尾:そうです、そうです。あとスピード感というか、情景が見られるのが気に入っているんだと思います。自分でもリハで歌った後「いい曲ね、この曲」って(笑)。「は?」とか思いながら(笑)。自分で言うのも珍しいのでね。

 


 

中島みゆきは「ツアーの際には夜間の移動が多いんです。飛行機での移動は好きじゃない。乗り物の中は空気が乾いているし、ノドによくないので。だから昼より夜の移動を自分は好む」(要旨)とかつて語っていたと言う。

そんなツアー移動の際のワンシーンを歌った曲、主人公は中島みゆきだろう。

歌詞には夜中、山頂にあるサービスエリアでの長距離トラックドライバーの「おっちゃん」との会話が綴られている。

歌詞に登場する地名「香川 新潟 大阪 宮城 姫路 山口 袖ヶ浦」は長距離トラックのナンバー。

 

(2023年6月19日筆者撮影/長野)


「埃まみれの長距離トラックが 鼻先ならべる闇の中」―見事な表現、この一行でサービスエリアに多くのトラックが並んでいる様子が瞬時に浮かぶ。アイドリングの音が聞こえ、今にも走り出しそう。

何と言っても中島みゆきとおっちゃんとの会話。

 

おっちゃん:どこまで行くの 何しているの
中島みゆき:歌を歌っているんです
おっちゃん:そうかい おいらは歌は知らねえな 演歌じゃねえんだろ そのなりじゃあな
おっちゃん:おいらはこれから北の国まで、となりはこれから南まで 便りのないのが良い便り どこかで会うかもしれねえな 身体こわさず がんばってみなよ たまには親にも 電話してやんな

 

二人の会話の様子が映像で浮かぶ。その映像の向うから、おっちゃんの人となりが伝わってくる。人懐っこく人が良い。どこか愛すべきお調子者の風ありか?出会う人みんなを包み込んでしまうような優しく大らかな人柄か。

この会話から伝わるおっちゃんの人柄に接すると、微笑ましくて涙が出そうになるのは私だけ?この歌を聴くたびに、おっちゃんに会いたくなる。

おっちゃんが演歌だと信じて口笛吹いているのは、アメリカロック界の重鎮・スプリングスティーン(ブルース・フレデリック・ジョセフ・スプリングスティーン)の曲。若き長渕剛も憧れていた。

 

「演歌じゃないわよね、その曲じゃね」…中島みゆきは思ったかもしれない。でも演歌だと信じているおっちゃんを愛おしく思っている。

おっちゃんと分かれる時の中島みゆきはきっと微笑んでいる。


この稿を書いていて、おっちゃんに会いたい気持ちがまた湧いてきた。

 

北の端から南の端までひとっ走りの長距離トラック。夜中に走ることが多いだろう。長距離トラックはまさに流れ星、流星。

 

夜空を駈ける流れ星に願いをかけるのはかなり難しい。でも地上を走る流れ星には夜空の流れ星よりはたやすい。

 

おっ、夜中の首都高、隣りを長距離トラックが追い越して行った。運転中ながら急いで願いをかけた。

 

「あのおっちゃんに会えますように」お願い

 

 


中島みゆき Concert「一会」(いちえ)2015~2016 

ダイジェスト・トレーラー(公式)

※「流星」は12分27秒時点から一部視聴可能


バスがとまった気配に気づき

そっとまぶたをあけてみると
ここは山頂のサービスエリア

次の町まであともう何百キロ
埃まみれの長距離トラックが

鼻先ならべる闇の中
自販機のコーヒーは甘ったるいけど

暖まるならそれでいい

どこまで行くの 何しているの
歌を歌っているんです
そうかい、おいらは歌は知らねえな
演歌じゃねえんだろ、そのなりじゃあな

香川 新潟 大阪 宮城 姫路 山口 袖ヶ浦
流れる星よ

いつか最後にどこへたどりつこうというのだろうか


おいらはこれから北の国まで

となりはこれから南まで
便りのないのが良い便り

どこかで会うかもしれねえな

身体こわさず がんばってみなよ
たまには親にも telしてやんな
吹く口笛はスプリングスティーン
あれは演歌だと おっちゃんは信じてる

香川 新潟 大阪 宮城 姫路 山口 袖ヶ浦
流れる星よ

いつか最後にどこへたどりつこうというのだろうか


地平のはしから地平のはしまで
皆、流星のひと走り
ほら 流星がまたひとつ 君は願いを言えたかい

香川 新潟 大阪 宮城 姫路 山口 袖ヶ浦
流れる星よ

いつか最後にどこへたどりつこうというのだろうか

流れる星よ

いつか最後にどこへたどりつこうというのだろうか

 

 

 

 

【更新履歴】

<2024.03.15>再掲

<2023.06.19長距離トラック写真挿入>
<2023.6.15再掲+リンク記事挿入>