<2023.05.06再掲>
<2023.05.03記事>

 

「報道特集」キャスターが取材後に聞かされた長渕剛『カモメ』の意味  2023年5月2日 Forbes JAPAN

 

 

1986年4月26日に起きたチェルノブイリ原発事故から37年経った現在、同じウクライナで、歴史上初めて、稼働中の原発がロシアからの軍事攻撃の対象となっている。この記事は1月7日放映の「報道特集」から、番組では伝えられなかったニュースの別の側面を届けるもの。

 

記事が取り上げたは、福島県南相馬市の小高区にある「双葉屋旅館」の女将・小林友子さん。東日本大震災による福島原発事故の影響で避難を余儀なくされた一人。2016年に旅館を再開した。


震災後、小林さんはウクライナに3度渡り、チェルノブイリ原発の視察だけでなく、甚大な影響が出たジトーミル州の小学校や個人宅も訪問したという。また、福島にも現地の消防士らを招き、放射能の影響や人々の暮らしについて講演をしてもらうなど、10年以上にわたってチェルノブイリ原発事故の被災者と交流を続けてきた。双葉屋旅館の廊下は床から天井まで、それらの写真や手紙で埋め尽くされ、「交流の道」と名付けられているという。

 

(左:小林友子さん/右:上村彩子さん 記事から)

 

小林んさんが語ったことの詳細は上のリンク記事に掲載されているが、小林さんを取材したTBSアナウンサーの上村彩子さん(現在「報道特集」―毎週土曜日17:30 - 18:50放映―キャスター)が、その時紹介された歌が長渕剛の「カモメ」(2012年アルバム『Stay Alive』収録)

 

アルバム『Stay Alive』自体が、東日本大震災に見舞われた方々を応援するもの。その中で「カモメ」は原発被害にあった現地の様子を生々しくかつ強烈に伝えている。長渕剛の思いを歌いながらも、現地の人々や動物たちの叫びを代弁しているように思える。

 

アルバムとタイアップしたギター一本、センターステージのツアーは日本武道館に参加したが、強く記憶残る見事なLIVEだった。

 

以下、上村アナウンサーが小林さんから紹介された「カモメ」についてのくだり(上のリンク記事から抜粋)

 

インタビュー後のカメラが回っていない時に、小林さんが長渕剛さんの『カモメ』という曲を私に教えてくれました。原発事故後、悲しみや怒りの気持ちを抱いたまま車を走らせていた時によく聞いていたそうです。「(曲が収録された)アルバムジャケット写真(以下※)がかっこいいのよ」とだけその時は言っていましたが、後にどんな曲か聞いてみると、長渕さんが福島県浪江町を訪ねて感じたことを題材にした曲でした。歌詞は、生活のまわりの物や音、全てが消えてしまったという描写が続きますが、私がハッとさせられたのは、小林さんの言っていた「全滅」という言葉が入っていた部分です。

避難指示が解除されて福島に戻った自身の経験と、その時の思いが、この曲と重なりあう部分が多くあったのかもしれません。

 

 

長渕剛―「カモメ」

 

浪江の街の請戸の港
カモメの群れが飛んでる
秋のコスモスが咲いて
子供たちがはしゃいでる
請戸の海から魚たちも
川を上ってしぶきをあげてる

浪江の街の立野の丘に
牛たちの群れが生きてる
立ち並ぶ朝の牛舎から
生き物の匂いがあふれてる
男たちは藁を運び
毎日牛たちの背中をさすってる

だけど全てが消えてしまった
全てが無くなってしまった
子供の声も消えちまった
漁師の声も消えちまった
農夫の声も消えちまった
牛たちの姿も何もかもが
やせ細った野良牛たちの
瞳をどうやって見つめればいいの

僕が歩いてきた道は 正しかったのか!
したたり落ちてく命の
最後の最後の一滴を
コメカミに突きつけてみた
今一度問いかけてみた
僕たちが歩いてきた道は

本当に正しかったのか!

浪江の街の駅前の
ひしゃげたまんまの商店街
パン屋も床屋も雑貨屋も
命の音が聞こえない
全滅していた暮らしの中
壊れた信号機だけが点滅していた
僕はただ立ちつくし空を見上げて泣いた

男は牛たちの乳を泣きながら搾っている
来る日も来る日も毎日
泣きながら乳を搾ってる
捨てては搾って搾っては捨てて泣いてる
男は牛舎でつぶやいた
「原発さえなければ・・・」

秋のコスモス畑で
も一度君たちと会いたい
秋のコスモス畑で
も一度君たちと唄いたい
秋のコスモス畑で
君の背中を追いかけたい
請戸の海から昇る朝陽に
も一度抱かれて泳ぎたい

生きたいと叫びながら
消えてった農夫たち
生きたいと叫びながら
消えてった漁師たち
生きたいと叫びながら
消えてったあの時の夕焼け
やせ細った野良牛たちの
瞳をどうやって僕は見つめればいいの

浪江の街の請戸の港
カモメの群れが飛んでる
4本の煙突の向こう
何も知らずに飛んでる
低く垂れこめた真冬の空
ハラハラと白い雪が降ってた

止めてくれ 原発を
止めてくれ 今すぐ
母親から子供を引き裂き
子供から母親を裂く
乳房をくわえる赤子の
瞳をどうやって僕は見つめればいいの

帰りたいなあ
wow wow wow wow
帰りたいなあ
wow wow wow wow
生まれた場所へ
wow wow wow wow
帰りたいなあ
wow wow wow wow
命の音を抱きしめて
浪江のカモメが空を飛んでゆく

カモメよ 飛んでくれ
カモメよ 空高く
高く 高く 高く 高く 高く
飛んでくれ
母親から子供を引き裂き
子供から母親を裂く
乳房をくわえる赤子の
瞳をどうやって僕は見つめればいいの