三浦知良さんが日本経済新聞で連載し、三浦知良さんのオフィシャルサイトともリンクしているコラム「サッカー人として」。2月17日には『ポルトガルが原点を呼び覚ましてくれる』と題して掲載されていた(下に全文)。

 

 

三浦知良さんは2023年2月26日、56歳の誕生日をポルトガルで迎え、現地の仲間たちに祝福されていた。

 

「苦労」というものを僕はもう一回味わいたいと思っている。ここから成長したければ、今回のような環境に来るべきなんだ。

 

挑戦に足を踏み入れるたびに、単身でブラジルに渡った15歳の頃を思い出す。いや、選手として生きている限り、いつだってあの駆け出しの自分に戻っている気がする。

 

失敗だとみなされるのかもしれない。だとしても、何か得るものを手に帰れるのならば必ず先々で生きてくる。選手として生きる僕の前に、失敗も何もない。

 

(以上、下の記事から抜粋)

 

大変な場、苦境に置かれてこそ発揮される三浦知良さんのファイティングスピリット。いつ読んでもこちらも熱くなる。

 

同じように、今置かれた立場で必死に頑張っている人は私の周りにもいるし、何よりまず私がそうありたいと思っている。我々同世代の代表のような存在として頑張る三浦知良さんを見ることで、そういう気持ちを確認できる。

 

50代中盤、勝った負けた、成功した失敗した…そんなこととは無縁になりつつあることは確かだが、何歳になろうと挑戦を止めない生き方は、無縁どころか年齢を重ねますます自分の人生そのものでありたいと言い聞かせている。

 

 連載「サッカー人として」
ポルトガルが原点を呼び覚ましてくれる(三浦知良)

2023年2月17日 日本経済新聞/三浦知良オフィシャルサイト

 

ポルトガルから、こんにちは。我ながら、大変なところへ来たもんだなと思います。

2月から加わったオリベイレンセは2部で6位と好調。同僚には若い選手が多く、でかくて速く、コンタクトも激しい。練習でもまれる僕の写真を日本の友人たちに送ったら、「がたいが全然違いますね。大変ですね」と一様に返ってきた。

20代、いや、代表クラスの選手が飛び込んでも簡単じゃないかもしれない。僕の今の力でそこでやっていくとなると掛け値なしに大変。挑戦してどうなるの、と思われるだろうか。

でも、「苦労」というものを僕はもう一回味わいたいと思っている。ここから成長したければ、今回のような環境に来るべきなんだ。所属先の選択肢のなかでポルトガル行きが一番大変なのは目に見えていた。そこにあえて身を置き、自分がどんな精神状態になり、どんな思いでピッチに向かうことになるのか、もう一度経験したかった。目をそらすのは逃げだと思った。

サッカー人として生きていくなら、人間として一番成長できるのはおそらく、一番苦労する道なんだ。僕は恵まれているよ、苦労ができるんだから。「大変ですね」と僕を気遣う日本の仲間たちは「でも、羨ましい」と判で押したように続ける。

挑戦に足を踏み入れるたびに、単身でブラジルに渡った15歳の頃を思い出す。いや、選手として生きている限り、いつだってあの駆け出しの自分に戻っている気がする。成功したいと踏み出した時点で成功は始まっているよと、かけられた言葉もよみがえってくる。

活躍できるだろうか、できないかな。批判と称賛、どちらが待っているかな。不安と期待がない交ぜの渦中にいられるのは幸せなことだ。そんな感情とは無縁になりかねない年齢であるにもかかわらずね。

「成功」との言葉が意味するものは、FWであれば「定位置をつかみ得点して勝利をもたらす」だろうか。それでいえばもし1分しか出場できずに終わったら、失敗だとみなされるのかもしれない。だとしても、何か得るものを手に帰れるのならば必ず先々で生きてくる。選手として生きる僕の前に、失敗も何もない。

でも、必ず試合に出て帰ります。40年前と同じようにそう思える自分がいる。

(元日本代表、オリベイレンセ)