朝日新聞に(わたしとサザン)というタイトルでサザンオールスターズに関する連載が掲載されていた(全9回)。

 

(2023年1月16日/筆者撮影)

 

先日、江ノ島・湘南界隈に行き、江ノ電にも乗って七里ヶ浜海岸、由比ヶ浜海岸沿いに走った。


私にとっての足寄(松山千春)、鹿児島(長渕剛)などと同じように、サザンのファンであれば、茅ヶ崎エリア中心にこの辺りはワクワクするスポットがたくさんあるんだろうなと、車窓から砂浜や海を見ながら思った。

 

その最中、私の中に様々なサザンの歌が聞こえて来た…はずもなく、”江ノ島がみえてきた 俺の家も近い”「勝手にシンドバッド」だけ。

 

その連載の第1回目が「勝手にシンドバッド」関連。以下全文を引用した(青フォント)。

 

(わたしとサザン:1)

勝手にシンドバッド 記者が歩いて聞いてみた 砂まじりの茅ケ崎って、どこ? 

(朝日新聞 2022年12月28日)

 

《砂まじりの茅ケ崎》
 サザンオールスターズのデビューシングル「勝手にシンドバッド」は、この印象的なフレーズで始まる。
 でも、「砂まじりの茅ケ崎」っていったいどこのことなんだろう? 桑田佳祐さんの出身地・茅ケ崎市を記者が「勝手に」歩いてみた。
     *
 「希望の轍(わだち)」の発車メロディーを聞きながら、JR茅ケ崎駅の南口に降り立った。
 砂は飛んでいないようだが、まずは海へと通じる「サザン通り」を進んだ。
 通りは昔ながらの商店街だ。すぐそばに桑田さんの母校・市立茅ケ崎小学校もある。
 プロレスやボウリングが好きで、人なつっこい少年が駆け回った街は、いまでは各地からファンが訪れる「聖地」になった。
 桑田さんと原由子さん夫妻が40年近く前に結婚指輪を購入したという時計店「時宝堂」も通りにある。
 店主の麻生正隆さん(65)は「当時のことは鮮明に覚えている」。
 雪が降ったある日の夕暮れ。夫妻は店を訪れるとすぐに「15番と9番の指輪をください」と注文した。「いきなりだったので、戸惑った」
 麻生さんが「砂まじり」と聞いて、浮かぶのは海岸線だ。
 「今はコンクリートで舗装されているけれど、昔は砂の道だった。砂が舞う中、そこを行き交う人たちを描いたのではないかな」
 さらに通りを歩くと、通りの脇にブティックが目についた。
 ブティック「ライオン堂」を営む三橋節子さん(73)にとっても潮風で砂が舞っていたかつての茅ケ崎は、なじみの風景だという。
 「自転車はさびるし、洗濯物を外に干せば砂だらけですよ」
 数十年前、地元のお祭り「浜降祭」のために桑田さんが子どものはんてんを買いに訪れたことがあるという。「気取らない、きさくな方だった」
 桑田さんが茅ケ崎に帰っていると聞くこともあるが、「せっかくの休みだからゆっくりして」との思いで声をかけないのが三橋さんなりの気配りだ。
     *
 サザン通りを20分ほど南に歩くと徐々にサーフボードショップなどが並び、いよいよ砂浜だ。
 「サザンビーチちがさき」は、1999年に茅ケ崎海水浴場から改称された。
 「茅ケ崎の砂浜は真っ白ではなくて、黒いんですよ。『泥臭さ』みたいなのがあるかも」
 こう語るのはサザンのコピーバンド「いとしのエリーズ」でボーカルを務める兼近TOWAさん。会社員として働きながら20年以上、ライブ活動を続けている。
 酒やけの影響か、バンドを続けるうちに声がしゃがれて桑田さんの声に近くなってきたらしい。「これからもずっと続けること。それ以外は考えていないです」
 海辺を歩くと、遠くにえぼし岩と江の島が見えてきた。
 気になるのが海岸と国道を隔てるように並ぶ松の木だ。すぐ裏には桑田さんが野球部で活躍したという第一中学もあった。
 「答えは桑田くんの母校のグラウンドですよ」
 そう断言するのは「茶商小林園」を営む小林健二さん(73)だ。自身も一中野球部出身で、弟は桑田さんと同級生だという。
 昔は砂の飛散を防ぐための松の木が低く、風が強い日は休校になることさえあったとか。
 小林さんは「サザン通り商店街」の会長を務めたことがある。
 2000年にサザンが茅ケ崎公園野球場での凱旋(がいせん)ライブをして以降、とりわけ多くのファンが訪れるようになった。
 そこでデビュー30周年の08年に、みんなで商店街の一角を改築して「茅ケ崎サザン神社」も作った。
 「桑田くんはサイドスローのエース」「うちのお茶を送ると、原さんが手紙で返信してくれるんです」「桑田くんが食道がんになったときに心配してメールしたら、むしろ『まだまだ商店街がんばってください』って励まされてね」……。小林さんの思い出話は尽きない。
 「あんなに地元を大事にする人はいないよ。いつまでも元気でやってほしいよね」
 手土産にティーバッグ「茶山(さざん)」を買った。
 「砂まじりの茅ケ崎」はどこだったのか。
 真相は桑田さんのみぞ知る。だが、故郷・茅ケ崎の人たちとの強い絆に、記者は胸を熱くした。(原晟也、伊藤良渓、大宮慎次朗)

 ★勝手にシンドバッド
 1978年に発売されたデビューシングル。早口で歌い上げる桑田佳祐さんの独特な歌い方も注目された。この年の日本有線大賞新人賞を獲得した。歌詞には「茅ケ崎」「江ノ島」など神奈川のローカルな地名がちりばめられている。

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サザンオールスターズー「希望の轍」