NHKスペシャル 混迷の世紀
「2023巻頭言 世界は平和と秩序を取り戻せるか」
初回放送日: 2023年1月1日(日)21:00~21:59
見逃し配信:1月8(日) 21:59 まで ⇒ 配信中(登録無料で視聴可)
2023年元日に初回放送。「安全保障」「核兵器」「エネルギー」「食料」の4つをテーマに、世界の各界識者7人(以下詳細)の知見から、混迷の時代を生きるうえでのヒントを探る。個人的に賛同した見解を下に趣旨として記載した。
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(番組紹介)
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、世界の平和と秩序を根底から覆した。その影響は、私たちの暮らしにも及んでいる。深刻化しつつあるインフレ、食料安全保障、エネルギー危機。グローバル化による相互依存が進めば、世界は安定すると信じられてきたが、その理念は打ち破られた。世界の安定は失われ「混迷の世紀」へと突入した。世界の識者へのインタビューから、これからの時代を生きるヒントを探る。
(7人の識者)
■スベトラーナ・アレクシェビッチ
(ウクライナ出身のジャーナリスト、ノーベル文学賞受賞者)
■イアン・ブレマー
(アメリカの国際政治学者、国際政治のリスク分析のオピニオンリーダー)
■ユベール・ヴェドリーヌ
(フランス元外相東西冷戦の終結時からフライン外相などを努めた)
■ダニエル・ヤーギン
(ピューリッツアー賞受賞、エネルギー問題の世界的権威)
■ジャック・アタリ
(経済学者、かつてのフランス政権の顧問、思想家)
■中満 泉
(日本人女性初の国連事務次長、国連軍縮担当トップ)
■ジャック・マトロック
(元駐ソ連アメリカ大使、核軍縮交渉を行ったレーガン大統領を補佐)
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フランス元外相 ユベール・ヴェドリーヌ
冷戦期のアメリカ(ケネディ大統領:当時)とソ連(フルシチョフ首相:当時)との関係にヒントを見出すべき。西側諸国指導者はいつかはロシアと向き合わなければならない。国際社会の中でロシアを完全に排除することはできない。
冷戦時代、互いに敵の全滅を狙っていた時代であっても、アメリカの指導者は旧ソビエトに逃げ道を残していた。冷戦時代の最悪の時でさえ、西側の政治家は「価値観の違う国とは話ができない」とは言わなかった。揺るぎない姿勢と強い責任感を持って対応し、成功した。
解説委員長:河野憲治
~ウクライナがロシアからの攻撃を受けたのは、ウクライナが核を手放したからだとの言説が一時期広まった。国を守るためにはやはり核を保有すべきだとの考え方が世界に広がっているのではないか?~
国連事務次官 中満 泉
核兵器を保有することが安全保障の究極的なツールなのではないか、という言説は非常に危険だ。これは核拡散の新しい理由を生み出すことになる。新しい核拡散の推進力が出てきてしまうことに非常に強い懸念を持っている。
安全保障に繋がる最も重要なことは核兵器を拡散させていくことではなくて、むしろ廃絶していく道筋に戻ることこそが重要。核軍縮は夢物語ではない。常に安全保障とは表裏一体だ。軍縮への合意を形成し、それに対するアプローチや戦略を考えていく必要がある。
~1985年からアメリカ(レーガン大統領)とソ連(ゴルバチョフ書記長)との間で核軍縮への交渉が始まり、1987年12月、INF(中距離核兵器)全廃条約が調印された。マトロック氏はその会談に同席していた。首脳会談に臨む前にレーガン大統領は「決して勝者と敗者という話をしない」との考えを示していた~
元駐ソ連アメリカ大使 ジャック・マトロック
核兵器は全人類の脅威だった。その前では勝者も敗者もない。核兵器をなくせばなくすほどみなのためになる。相手より多くの核兵器を諦めるほうが、相手より多く核兵器を製造することよりもよいこと。その結果、平等で良い結果を双方が得た。両国の利益になるものだった。だから冷戦に勝った、という言い方は間違っている。冷戦の終結は双方の利益のために交渉されたものであり、みんなが勝利したのである。
外交の価値を考えている。核の緊張が非常に高まっていた頃から、私たちは密かに対話を始め、共通の利益を探った。互いに協力できる落としどころを見つけ、そして個人的かつ率直に様々なことを語り合える対話の場を設定した。いわゆる”裏ルート”と言われたりするが、それは必要不可欠だった。たとえ同意できなくても、相手の話に耳を傾け、何を伝えようとしているのかを理解することが大切だ。
ホワイトハウスでレーガン大統領と働いていた時、私がやったことは、ゴルバチョフ書記長の政治基盤はどこで、どんな圧力にさらされているかを(レーガン大統領)に理解させることだった。すべての論争が親善的に解決できるなどとは言わない。しかし対話をなくせば外交のチャンスがなくなってしまう。
もし相手の言うことを嘘や虚偽、単なるプロパガンダだと否定するならば、決してうまくいかない。他国の指導者を公の場で悪者扱いしてはならない。(これまで数々のひどいことをしてきた指導者はいたが)それでもその行動にどんな意味があるのかを理解する必要がある。
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