<2022.12.11>起稿

 

2022年11月28日に中島みゆきがサブスク配信を解禁した。

 

シングル91曲のみだが嬉しい解禁で、AppleMusicには「はじめての中島みゆき」プレイリスト(25曲)も配信され、これらを連日スマホで聴いている。

 

 

サブスク配信については、ミュージシャンそれぞれの考え方があるのでそこに言及するつもりはない。

 

私個人としては、もちろんただ(無料)ではないこの配信があることで、これまでCDだけだったら絶対に聴かなかったであろう多くの歌手の多くの楽曲に触れられている。サブスク配信の恩恵を大いに受けている一人である。

 

そういう自分を見ても、サブスクは歌い手にとっては従来のファンだけでなく、新しい人たちに自曲を届けることができるひとつの手段だと思っている。

 

 

中島みゆき(サイド)が、さすがだなと思ったことは―

 

シングル曲サブスク配信解禁で「あらためて中島みゆきの歌が身近になったのは間違いないことだろう。このシングルのサブスク一挙配信開始をきっかけに、シングル曲と同じように名曲、名作が揃う中島みゆきのオリジナルアルバム(CD)の世界にもぜひ興味を持っていただきたい」(YAMAHA Make Waves

 

つまり時代の流れを受け止めてシングルは解禁するが、それはあくまで中島みゆきを聴いてもらうきっかけであり、その向こうにある名曲の数々をCD(アルバム)で、ライブで聴き、中島みゆきの世界にぜひ触れて欲しいという方針である。

 

時代の流れには乗るが乗り切らない、時代の激流の中でも自分のオールは手放さない。その根底には、自分に対する世間の評価と需要へのしっかりとした認識があるように思う。

 

音楽評論家の富澤一誠氏は12月1日配信の「日刊ゲンダイDIGITAL」にコメントを寄せていた。

「中島みゆきさんも考えるところはあったと思いますが、時代の流れもあり、決断したということでしょうね。みゆきさんの楽曲は、純文学的で、高い芸術性を保ちながら、大衆性も兼ね備えており、シングルはほとんどヒットしています。レコード、カセットテープ、CDの時代を経て、長らく多くのファンに支持されてきましたが、サブスク解禁によって、若い人たちなど、新たなリスナーを獲得することは間違いありません」

 

中島みゆきのサブスク配信解禁と同時にYoutubeにもYAMAHA MUSIC COMMUNICATIONSからシングル公式音源が多数公開され、こちらもよく観ている(聴いている)。

 

これらの中でも嬉しかった曲のひとつ「あした天気になれ」

 

1981年3月21日に中島みゆきのリリースされた10作目のシングル

 

1981年3月5日に発表されたオリジナルアルバム『臨月』から、その発売直後シングルカットされた。

 

 

中学時代一緒にギターをやっていた友人が中島みゆきの大ファンで、私が松山千春のLPを貸す代わりに、彼が中島みゆきのLPを貸してくれた。

 

とくに中学・高校時代は中島みゆきをよく聴いた。『臨月』もそのうちの一枚で、1曲目に収録されていた「あした天気になれ」は、「何ンにつけ一応は 絶望的観測をするのが癖」(以下歌詞)の私は一回聴いただけで大好きになった。

 

あと文句なく歌(歌詞)の力を実感し震えた「友情」、さらには「雪」「あなたが海を見ているうちに」「あわせ鏡」…要するに名曲揃いのアルバム。

 

「あした天気になれ」

 

ぱっと聴くとネガティブだが、あえて本心とはまったく逆の心理状態を綴ることで、その本心をより鮮明にする見事な表現。そのことは以下の歌詞に象徴されているように思っている。

 

宝くじを買うときは
当るはずなどないと言いながら 買います
そのくせ 誰かがかつて
一等賞をもらった店で買うんです

 

本心は宝くじが当たって欲しい。本心は明日に希望を託したい。本心は夢がかなって欲しい。本心は誰かにそばにいて欲しい。あした天気になって欲しい。

 

この曲のアレンジは星勝氏。瀬尾一三氏もそうだが、こういう歌詞の世界だからこそ、あえてこうしたアグレッシブと言ってもいいアレンジに仕上げたように思う。

 

歌詞、メロディ、アレンジ、本当にインパクトがある。

 

 

    

何ンにつけ一応は
絶望的観測をするのが 癖です
わかりもしない望みで
明日をのぞいてみたりしないのが癖です

夢もあります 欲もあります
かなうはずなんて ないと思います
夢に破れて あてにはずれて
泣いてばかりじゃ いやになります

雨が好きです 雨が好きです
あした天気になれ

宝くじを買うときは
当るはずなどないと言いながら 買います
そのくせ 誰かがかつて
一等賞をもらった店で買うんです

はずれた時は あたりまえだと
きかれる前から 笑ってみせます
あたりまえだと こんなものさと
思っていなけりゃ 泣けてきます

愛が好きです 愛が好きです
あした孤独になれ

夢もあります 欲もあります
かなうはずなんて ないと思います
夢に破れて あてにはずれて
泣いてばかりじゃ いやになります

雨が好きです 雨が好きです あした天気に
雨が好きです 雨が好きです
あした天気になれ

 

 

ちなみに、「あした天気になれ」を聴くとすぐに連想するのが松山千春の楽曲「egoist:エゴイスト 自己中心主義者」(2002年)。とくに最後のフレーズは「あした天気になあれ」の世界と同じものを感じている。

 

松山千春らしいフォークソングと言っていい。現代の世相を幾つもの視点から切り取りながら、最後に

 

明日が涙を流すなら 私は明日を求めない 
暗闇が続くこの世なら 私はこの世を認めない

 

明日も見えないような、いつまでも人々が苦しみ続けるような暗闇に覆われた時代が続くのなら、それだけは絶対に認めない。私一人になっても認めない。その意味で私はいつでも自己中心主義者:エゴイストでいい。