<2022.11.12記事/コラム追加>
2022年11月9日 読売新聞[編集手帳]
<平和>は戦争や災害などがなく、穏やかな世をいう。<和平>はその前段階というべきか、悪い状況からの移行を意味する◆ことばの歴史をたどると、和平は中国から入り古くは9世紀の文献に見られる。それに比べ、平和はずっと若い。一説によれば、明治期に英語の「ピース」をどう訳そうかと迷って、和平をひっくり返したといわれる◆昨晩の空で皆既月食と天王星食が起こった。月とそばの惑星が同時に光の色を落とすのは1580年以来、442年ぶりだという。当時は平和でも和平が進んでもいなかった。戦国時代である◆月食が起こった時刻までは調べていないけれど、天下人の織田信長も赤黒くなる月を見たのかと想像すると楽しい。その時は土星食だった。もし南蛮渡来の望遠鏡を信長が持てば、月に寄りゆく星も明瞭に見えたかもしれない。が、ちょっと惜しい◆望遠鏡の渡来は1613年、手にしたのは徳川家康とされる。つまり月と惑星の同時食を日本で初めて確認したのは、昨夜ベランダなどでレンズをのぞいたみなさんということにもなろう。何とか平和を保てている国において、である。
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<2022.11.9記事>
422年ぶり、一生に一度のダブル天体ショー!
422年ぶりに、月が地球の影に隠れる皆既月食と、天王星も月に隠れる惑星食が一夜にして観られる。次に観られるのは2334年と予想されているらしい、まさに一生に一度。
天体にはまったく興味がない私でさえ、422年ぶり、私の人生ではこれが最後となると見たくもなる。
11月8日(火)19:00過ぎ、仕事を中断させて外に出た。
何人もの人が月を見上げていた。皆既月食が終わるまで約20分間、月を観続けた。こんなに長く月を眺めていたのは初めてだろう。
どうか愛しき人間(ひと)よ、ご無事でいて下さい
どうか恨まず憎まず悪びれず」
そして松山千春「空と月」
「空を見上げて 青い空 離れているけど 同じ空だよ
愛を風に乗せて君に 届けたいと思うのだけど」
どの曲もいい。
ASKA、長渕剛、松山千春…それぞれの個性と持っている世界観がよく現れている。
他人の何気ない一言に傷ついた自分の心も、月が近づく頃になれば少しは癒えるだろう。
同じ空の下、同じ宇宙空間の中で生きている全国各地、世界各地で必死に奮闘する縁した愛しい人たち、どうかご無事でいてください。
どうか恨まず憎まず悪びれず、そして腐らず、お互い今いるその場所で頑張っていきましょう。
蛇足、駄作の一句
「逝きし母(も)の 笑顔に似たる 今宵(きょう)の月」
(1988年/虹野かなた)