8月28日放送の「松山千春 ON THE RADIO」
自身が中学、高校とバスケットに熱中していたことを語り始めた際、そのカウンター的に語った。
「ギターで歌を歌うって言うのはそれはもう小学校、柚原良生(ゆはら よしたか)っていう同級生のとこでな、ギターを教えてもらって。当時のフォークソングをいろいろ歌うようになってて、けどそれはあくまで趣味としてやってて、”本業”はバスケット、学業よりもバスケット!」
ほんの短い語りながら、柚原良生さんの名前を聞いて、柚原良生さんに絡む二つのことを思い出した。
書くまでもないけれど、まずは柚原良生さんについて。
松山千春自伝『足寄より』の記述から推察すると、松山千春が柚原良生さんと友達になったのはおそらく小学校4年の頃。
同書には次のようにある。
「そのころ、俺、柚原良生と友だちになった。良生の家は俺んとこと同じ、足寄町東二区で、いわば同じ町内会みたいなもので、俺の家の三軒となり」(同書52㌻)
「よく一緒に学校に通った。『良生、行こう』俺が誘いに行ってね。畑の中の道。冬は積もった雪に道をつけていく。春になると、道草してオタマジャクシをとる。夏は小川でザリガニだ。(…)良生と通った道の途中にポプラがあった。(…)まっすぐ上にしか伸びない。(…)『良生ちゃんとポプラ並木』って歌は、それが素材になっている。まったくの事実だ」(同54~55㌻)
「五年生で岡林信康さんに出会うんだ。良生にこんなやつがいるって教えられて、聴かせてもらった。(…)ガツーンとショック。とりこになった。
良生の兄貴がギター持ってて、それを借りてきて、ポロンポロンやった。(…)いいもんだなあと思った。(…)やってみようと思った。俺も歌ってみよう、と。(…)俺の中でなにかが芽ばえた。小さな芽ばえ」(同60~61㌻)
松山千春-「良生ちゃんとポプラ並木」
(1978年 アルバム「歩き続ける時」収録Ver.)
(1)2019年5月のこと
(2019年5月16日/東京国際フォーラム/日刊スポーツ)
3年前、2019年5月12日放送の「松山千春 ON THE RADIO」
5月8日の旭川市民文化会館でのコンサートのため、札幌から車で移動していた7日、松山千春が心臓発作を起こした。そのことについて詳しく語った。
「この高速で、岩見沢辺りですね、私が、心臓、きりきりと痛みが走ってきまして。
心臓押えながら。そして運伝してくれているマネージャーの元(げん)ちゃんに、”ちょっとパーキング入ってくれないか。頼む、停まってくれ”。
もうその時は痛みと苦しみとあとは過呼吸みたいな状態で、もうぜいぜい言いながら。さらに全身の力が抜けちゃってさ、もう元ちゃんに寄りかかるようにしか歩けない状態になった。
そして元に言った。”お前、このまま旭川に着いて病院に行こうなんて思うなよ。病院なんか行ったら即入院で、明日コンサート出来なくなるから。この発作、絶対に治るから。頼むから、旭川着いたらそのままホテルに行って静かにさせておいてくれ”
そして旭川のインターに着いた頃に治まってきた」(要旨)
あの時は、その翌8日が旭川市民文化会館、10日が帯広市民文化ホールで公演があった。帯広は地元ということもあり、そこに柚原良生さんも来られた。
「俺がフォークシンガーになりたい、というきっかけを作ってくれた柚原良生も来てくれた。(帯広のコンサートは)楽しかった」
と上の12日のラジオで語っていた。
(2)2013年5月、東京国際フォーラムでのこと
松山千春コンサート・ツアー2013【夢破れて尚】
2013年5月14日、東京国際フォーラム2日目。
この日、柚原良生さんが客席にいるということで、1回目のアンコール、弾き語りで「良生ちゃんとポプラ並木」を歌った。これがよかった。帰宅して夜中というのにひとり弾き語りした。
「流浪」のイントロが流れ始め、2回目のアンコール。ピアノをバックに話し始めた。
「良生、うちは、金がなくてなあ。母ちゃんは土方だし、父さんは好きな新聞作ってた。小学校何年のときだけっけな。お前家行って、ギターを初めて触って弾いて。
これが、Am(エーマイナー)、Dm(ディーマイナー)だ。あれから始まったんだよ。あれから始まって、こんなにたくさんの人が俺の歌を聴いてくれるんだよ。
お前たちは最高だよ。Em(イーマイナー)~」
と言った後「旅立ち」の前奏が流れ、歌い始めた(「旅立ち」始まりのギターコードがEⅿ)。感動した。今こうやって打っていてもあのシーンを思い出して背筋がぞくぞくしている。
松山千春―「旅立ち」
(1987年アルバム『起承転結Ⅳ』Ver. )
私の中ではコンサートに参加し続けてきた40数年の中で、一番不完全燃焼で残念だった今年5月12日の東京国際フォーラム公演。その仕切り直し感が強い。
10月7日から始まる秋のコンサート・ツアーで、ぞくぞくするような感動や座席に押し付けれるような衝撃、そんなことを体感できる渾身のライブを期待している。