「職業としての大学人」
紅野謙介 著/文学通信

2022年4月25日刊

336頁/本体定価1,800円(税別)

 

2019年から最近までの3年間は、日本大学がマスメディアを賑わし、社会からの注目を浴び続けてきた。

 

「アメリカン・フットボール部危険タックル問題」、「日大文理学部非常勤講師による授業中の人種差別発言問題」、「元理事や前理事長の逮捕・起訴事件」…どれも記憶に新しいことばかりである。

 

これらの問題、事件の渦中、日大文理学部長を務めていた著者が、その時大学内でどんな議論と対応がなされていたのか…その時書き残していたメモをベースに、それらを具に綴ったドキュメント。


「事件以前よりも、以後の対立や沸騰する議論の方がはるかに精神的には健康であった」(11㌻)


この言葉が、事件以前の日大の管理運営の体質と実態を伝えている


大学の存亡がかかっていた当時の著者の視点と対応は、一学部の教員の枠をはるかに超えて、大学全体に及んでいた。その点からタイトルを「職業としての大学人」とした。

 

独裁と言っていいほど権限が一人に集中する出来上がった古き体制の中で、問題意識のある人はどう自分の言葉を発し、どう動けばいいのか―。大学に限ったことではなく、組織に生きる人が読んでも吸収できるエッセンス満載の鮮度が良い事例集。

 

(以下、文学通信社の同書紹介ページから一部抜粋)

 

古い体質と格闘するなかから、どう新しい大学を生み出すのか。

「大学改革」のかけ声ばかりが先行し、学問や教育が痩せ細るなか、大学への信頼はどのように取り戻せばいいか。その問いへつながる道筋に、近現代日本文学の研究者が、「大学人」として発信しつづけた言葉を配置する。

日本の大学行政の問題点をもっともチープなかたちで照らし出すにいたった、元理事や前理事長の逮捕・起訴といった、いわゆる日大事件。日本大学アメリカン・フットボール部の危険タックル事件。それらの渦中にいた著者が、できるかぎり事実をたがえることのないよう、メモと記憶にしたがって書き下ろした第1部「大学の現在、そして危機のなかの日常」。圧巻の93,000字。大学人はもとより、組織にいる人間には必読のテキストである。