<2025.06.07>再掲
<2023.07.21>再掲
<2022.05.07>記事
2022年5月3日にNHK総合で再放送(初回放送は2007年)された『佐野元春のザ・ソングライターズ』、その初回、Part1とPart2は小田和正がゲスト(講師)だった。
ソングライターをゲストに迎えて、それぞれの「詞」の世界にスポットを当て、佐野元春とのダイアログ(対談)、そして聴講生とのワークショップ(質疑応答)を通して、創作の秘密を紐解いていくことがこの番組のコンセプト。
小田和正のPart1では「the flag」を取り上げた。
途中、佐野元春が「the flag」の歌詞を一人で朗読した。もちろんメロディに乗るからこそその歌としての存在があるのだが、こういう表現方法で歌詞だけにスポットを当てると、より一層その世界が伝わる。
佐野元春との対談の中で小田和正が「the flag」について語った。
「『the flag』は具体的に、やっぱり大学紛争とか、戦ってきた人間とかがすごくイメージとしてはある」
その前の「the flag」についてのナレーションではこう紹介していた。
「この曲は学生運動の時代をともに生き、時を経て五十代を迎えた同世代の人たちへ、小田さんが”これからも一緒にがんばっていこう”という気持ちを込めて書いた曲です」
小田和正コンサートツアー2019『ENCORE!! ENCORE!!』、6月26日に参加したさいたまスーパーアリーナで聴いたこの曲は今も響いている。
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<2019.01.06>記事
鶴見祐輔氏の「ナポレオン」(潮文庫/昭和44年・1969年11月初版)はこれまで何度か読んできた。その後、潮出版社が「若き日の読書ベスト・セレクション」というシリーズを開始した。
文庫本よりもふた回りほど大きなサイズになって、いくつかのタイトルが再刊行された(「ナポレオン」は2000年12月刊)。私はその版で2003年8月20日に読了(作品自体は二度め)していた。
鶴見祐輔氏は読者を引き込まずにはおかない筆致で、熱い思いを込めてナポレオンの生涯を綴る。同書の「第四部」として、著者の「ナポレオン論」を残している。
(ナポレオンは、思想・考えを、現実の社会の中に具現化する力に恵まれた。その根源の力は…)
「それが彼の渾身の勇気である。
彼は頭のなかでこうと決めたら、天下になにものをも恐れずして突進する勇気を多分量に恵まれていた。
『前進!』
そう叫んで彼はその思想を実行した。(中略)
われわれはいろいろの希望と計画とをもっている。しかし危険の恐怖のために、とうとうこれを実行せずして死んでゆく。なんぴとといえども、自己心内の恐怖心を克服したら、すばらしい仕事ができるのだ」 (同書474㌻)
2000年4月にリリースされた小田和正のアルバム『個人主義』
それまでのアルバムに比べて、メッセージ性の強い曲が並ぶ。
3曲目「the flag」
この曲と、旗(flag)を模したようなアルバムのジャケット写真とは関連があるのだろう。伝えるメッセージを考えると、まさにこのアルバムのフラッグシップとしての曲。
ベストアルバム『自己ベスト-2』『あの日あの時』にも収録されている。
「汚れなき想いと 譲れない誇りと」
長く現実社会の中で戦ってくると、時に疲れたり傷つくことがある。一方で人を傷つけることもあった。
止まることはしない。動きながら、少し休めばいい。心と体を整えながら、やがて傷が癒され、必ず力が漲ってくる。
「戦える 僕らの武器は 今 何かと
それを見つけて こゝへ 並ばないか」
傷が癒え、力が漲ってきたその時には、あらためてそこに立とう。勇気を出してあらためて大きく一歩踏み出す時である。
いろいろ経験した分、懐が深くなる。角が取れ、周囲の人を生かしながら、自分が目指す、成し遂げたいことに向かって挑戦していける。
一人ぼっちになった気持ちになる時がある。よく分かる。でも、そもそも一人。
背負いこんだものも、目指すべきものに向かって歩く道も他人には見えはしない。自分一人が向き合い、歩いていくものである。
「あの時掲げた 僕らの旗だけが
一人揺れている 時の風の中で」
時の風雪に耐え、今も風にたなびく自分の中にある旗を抱きしめ、それを目指して
「僕は諦めない 誰か聞いているか
僕は こゝにいる 誰かそばにいるか」
たゞ 若かったから それだけのことかな
あの頃 僕らは 傷つけ合っていた
汚れなき想いと 譲れない誇りと
迷いのない心は どこへ行ったんだろう
あの時掲げた 僕らの旗だけが
今も揺れている 時の風の中で
それからの 僕らに 何があったんだろう
変わってしまったのは 僕らの方なんだ
自由な翼を 僕らは たたんで
二度と そこから 飛び立つことはなかった
やがていつの日か この国のすべてを
僕らが この手で 変えてゆくんだったよね
僕らが この手で すべてを
こゝから 行くべきその道は どこかと
できるなら もう一度 捜さないか
戦える 僕らの武器は 今 何かと
それを見つけて こゝへ 並ばないか
僕は諦めない 誰か聞いているか
僕は こゝにいる
誰か そばに いるか
やがていつの日か この国のすべてを
僕らが この手で 変えてゆくんだったよね
あの時掲げた 僕らの旗だけが
一人揺れている 時の風の中で