3月20日の「松山千春 ON THE RADIO」
3月16日に福島沖を震源に発生した大きな地震のこと、1995年のこの日(3月20日)、地下鉄サリン事件が起こったことなどを織り交ぜながら、基本的には現今のウクライナ情勢について、番組の随所で語っていた。
戦争によって命を落とす人々、逃げ惑う人々に自らの視線を向けつつ、戦争を全面的に否定し、話し合いでの解決を求める語り―個人的には、とても松山千春らしい、人々への愛がこもったものだと思った。以下囲み強調箇所にその語りを書き起こした。
松山千春、今回春のツアーの二部では、当然ながらこのウクライナ情勢のことをメインに語り、選曲もしてくるだろう。それが松山千春であり、そのスタイルで45年間やってきた。
ただ、二つだけ、私自身、偉そうで余計なお世話であるこを重々認識したうえで、それが杞憂であって欲しいとも思いつつ書くと…。
ひとつはウクライナ情勢に関しての語り口は、この日のラジオ(以下)のようなトーンが望ましいと思う。松山千春の思いを中心に語る。
ステージでは、ラジオ以上にストレートに語るだろうけど、ラジオでも時折その論法を取るが、人々や平和への思いを訴えたいがために、誰かや何かを批判し否定しつつ、その上に自分の考えを展開するような論法は避けた方がいい。
ましてやウクライナやロシアに関する歴史認識がいくつもの見方で重なっていたり、政治上のスタンスが異なる問題-例えば、ロシアのクリミヤ半島の併合(2014年)など-については、トークでは触れない方がいい。
また、思い昂ぶり言葉が走り過ぎて、松山千春が考えるウクライナ情勢の本質を日本にまで引き当てて、日米安保や集団的自衛権など防衛について絡めて話すことはとにかく避けて欲しい。政治家さえも、多様な考えを持つ国民に配慮し、軽々には語らないテーマである。
二つ目。語りたい気持ちはよく分かるが、このあたりのトークはとにかく短く。ここまで反戦の歌を何曲も残しているわけだから、それらを歌えば松山千春の考えは充分伝わるので、多少トークを我慢するぐらいの気持ちで、その分歌を中心に二部を進めた方がいいと思う。
通常二部は5曲のところ、トークを短くし、反戦を訴え、平和を願う歌を7曲、8曲並べてもいいと思う(ここまで書いてきて、松山千春にはそれは無理だな、と自分でも思うが…)。
そうしたオーディエンスへの配慮なしに、ステージ上からマイクを使って大音量で一方的に言葉をぶつけると、松山千春以上に知識を持っていたり、松山千春とは違う考え方がありながらも、マイクもなく客席からは反論できないオーディエンスの不満が弾けてしまう場合もある。
2017年11月14日の東京国際フォーラムのように、客席から叫ぶように大声でクレームが入ることがあるかもしれない。
それがなかったとしても、中には豊富な知識があるオーディエンスは内心ではばかばかしく思い、客席にいながらも、松山千春との無言の距離が開いてしまう場合もあるかもしれない。それをちょっと長い目で見れば、コンサートから足が遠のく場合だってある。
幾つもの大病を抱えた松山千春66歳、デビュー46年目。ここまで来ると、1回1回が大切なステージである。そこをファンのみなさんと一緒に感動の場にするのか、後味の悪さを生み出してしまうかは、まずは松山千春自身の言動と配慮にかかっていると思う。
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ロシアがウクライナに侵攻してからもう3週間以上、経つわけでね…。先月(2月)の24日から始まってますからね。(…)(ウクライナに対して)国際世論、また物資的にも、世界中が支援してるから。まぁ、物を渡せば済むという問題ではないんだけど、せめて自分たちにできることを、しっかりやらせてもらうしか…ほんとに、今はないんだよな。戦争はいかんよ。絶対いけない!
俺がつくづく思うのは、人を殺したり、傷付けたり、建物を破壊したり、いろんなことがあるけど、やっぱりわれわれ普通の人間、民間人…その未来を奪っちゃいけないよ。たとえどんな独裁者であろうが、いかに力の強い人間だろうか、人の未来を奪ってはいけません。

われわれはそれを叫ぶ。「戦争反対だ!加害者も被害者もない。すべてが被害者になってしまう」。逃げ惑うウクライナの方々、さぞ辛いだろう。しかし訳も分からず戦場へ行って、残念ながら死んでしまったロシア兵、それも若いロシア兵。これもまた犠牲者。だから、(戦争は)何も生まないんだよ。一刻も早く止めてもらいたいと思います。
人間が犯す一番愚かな行為が戦争である。われわれはどんなことがあっても戦争という手段は使わないぞ、そういう思いを固くするために(あえて今夜は「軍歌」を)聞いていただきました。
風評被害は一人から始まるんだ。無くすのは一人から無くしていけばいいんだ。
日本もそうだけど、やっぱり命の大切さ、というものをもう一度考え直した方がいいかもしれないな。やっぱりウクライナで、ロシアの襲撃によって亡くなった方、ケガされた方、また、(…)(その戦禍から)逃げられた、非難された方々…、あのお顔を見ていると、絶対戦争なんかやっちゃいけないなと思うし。
共産主義、社会主義、独裁主義よりも民主主義がどれほどわれわれ国民にとって自由であって、平和を守りやすいシステムなのか、今一度われわれは考え直すべきだし。かと言って、違う主義、主張の国を敵視する必要もないし…。「あぁ、あなたとはここで考え方が違うんですね。(その違いを尊重しつつ)お互いうまくやっていきましょう」…そんなかたちでお互い話し合えればいいなと思います。(…)
トルコが、エルドアン大統領が一生懸命仲介役に入ろうとしているし、フランス、マクロンさん(大統領)も入ろうとしてるけど…。バイデン大統領がプーチンと直接話しをしてみたり、習近平とプーチンと直接話をしてみたり…。できれば話し合いで(解決の糸口を見出してほしい)。戦争はいけません。
松山千春―「兵士の詩」
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