週刊少年マガジンに「未来新聞」という特集が掲載されたそうである。1968年の話しだが。1968年は私が生まれた年なので、多くの活字の中に紛れていてもいつもすぐに目につく数字である。

 

(1968年当時の週刊少年マガジン)

 

その特集を通して「春秋」が読者の心に届けたのは、大人世代の責任として、未来へ持続可能な地球環境の継承と、戦争なき平和な世界の構築の大切さだった。

 

2022年2月25日 日本経済新聞「春秋」

 いまから半世紀以上前、1968年の週刊少年マガジンに「未来新聞」という特集が載った。21世紀の暮らしや技術を占うこの企画にあったのは「ハラペコ食品会社で、おいしい人造肉を売り出した」との一文。植物のたんぱく質を原料に、大量生産を実現したという。
▼植物由来の代替肉が注目される今日を言い当てたような予想に感心していると、続く内容が目を引いた。牛肉の歯ごたえに似せるため、プラスチックを混ぜてある――。64年出版の「プラスチックス」(井本稔著)がこの素材に囲まれた暮らしを「新しい生活様式」と表現したように、イメージはずっとポジティブだった。
▼両者の扱いは環境問題をめぐっていまや対極にある。植物肉は、土地や水をたくさん使う畜産を補う食品として期待される。かたやプラスチックは、大量に廃棄されるゴミをどう処理するかで、以前と比べて肩身が狭くなった。海のプラスチックのゴミ問題に関するルールをつくるための国際的な論議も近くスタートする。
▼それにしても、と現実に照らしてため息が出るのは特集が描いた未来の明るさだ。「ロケットで米国の学校に通学」「子どもが乗れる人工の雲」。無限の夢を持てるのが子どもの特権なら、それを可能にする世の中をつくるのは大人たちの重い責務だ。持続可能な地球環境も、そしてなにより軍靴の響かない平和な世界も。

 

 

以下のリンクはアントニオ・グテーレス国連事務総長が2020年7月18日、 「不平等というパンデミックへの取り組み: 新時代のための新しい社会契約」をテーマに行った講演全文である。

 

17~18世紀にかけてホッブズ、ロック、ルソーらが提唱し、近代以降の政治思想の底流を形成してきた「社会契約説」には構造的欠陥がある。それは社会や国家を成立させている合意(契約)は、”自由で平等な人民の自発的な意志”によるという考え方。

 

つまりここで言う「自由で平等な人民」というのは、「能力においてほぼ平等で、生産的な経済活動に従事しうる男性」だけをその主体として想定(マーサ・C.ヌスバウム/神島裕子訳)していることである。

 

講演ではこの「社会契約説」に対し「新しい社会契約」という言葉を使い、主に世界中に現在も根強く残る差別、不平等の撤廃を訴える。その根っこには将来の世界を担う若い世代にこの地球環境と、差別と不平等なき社会、平和な世界を残していく、という強い責任感がある。