<2024.02.28>公式音源挿入
<2022.03.01>起稿

 

「平和を願う心」と「反戦への意思」…一見根っこは同じに思えるし、一般的にはそう思うことが多いかもしれない。ただ、平和を守る手段として戦争を起こすという思想や理屈、行動はこれまでもあったし、現在もある。

 

ここでの「反戦」は文字どおり、目的の如何に関わらず、戦争という行為自体を絶対悪として反対し、否定することを前提としている。

 

松山千春の楽曲の中で明確に「反戦の意思」を歌った歌は何曲ぐらいあるのか…。

 

「いつの日か」(1985年)

「時代」(1996年)

「君は僕」(1996年)

「最後のチャンス」(1998年)

「La La La」(2000年)

「兵士の詩」(2003年)

「淡い雪」(2017年)

 

個人的にはこの7曲がすぐに浮かぶ。

 

松山千春は2022年2月27日放送の自身のラジオ番組「松山千春 ON THE RADIO」の中で、現在のウクライナ情勢を通して自身の思いを語った。

 

「プーチン大統領は核兵器までちらつかせて、あれはないよな。俺もさすがにびっくりしたよ。この時代で、被爆国・日本としてですよ、(許してはいけない)。核兵器を使った戦争をやるって言ったら、これ、地球がもう何個もなくなるような話しだもん。それをいかにも、威嚇とは言えですよ、口に出しちゃいかんよ」

 

「もし俺がウクライナで歌っていたら、きっとギターから銃に持ち替えて、戦っているのかもしれません。あの、口では何でも言えます。“どんな時でも俺は歌う”とかな。けど、親、きょうだい、親戚、また、愛する人たちが命の危機に遭っている時にやはり自分は、銃を選んでしまうのかもしれない」

 

この日の放送の最後に自身の「最後のチャンス」をかけた。

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昨年の「終戦の日」(8月15日)に放送された同番組でも語っていた。

 

「”終戦の日”ということで、8月15日。やっぱり我々は忘れてはならない日だし、広島、長崎に原爆が投下され。(中略)戦争というやつはやっぱり人間が犯す一番愚かな行為だと思います。やってはならない、何の得にもならない、愚かな行為だと思います」

 

「毎年、終戦の日に思うことはもう二度と戦争が起きないように、また今世界各国で内戦状態になるような所が、平和に話し合いで解決できるようにと思います」

 

この語りの後に「最後のチャンス」をかけた。

 

「最後のチャンス」は、松山千春が作った「反戦歌」「平和を願う歌」として自身の中で大きなウエイトを占め、大事にしている歌なのだと感じている。

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<2019.4.22記事>

 

 

松山千春は「兵士の詩」(2003年)で

 

「僕が恐れるのは 戦車ではなく 何度もくり返す 人の心」

 

と歌った。


人間の心には、相手を思う優しさがあり、人々と仲良く生きていたいとう共存の心もある。一方で他者への不信もあれば、他者を自分の意のままに動かしたいという心もある。

こうした心がどれかひとつの状態に固定されるわけではなく、外界の縁に触れて、自分の中にある様々な心が表れてくる。出発点はいつもひとりの人間の心。

他者の言動に縁して、他者への不信や意のままに動かしたい衝動に駆られれば、それが暴力などに繋がり、大きく言えば殺人や戦争・紛争へと繋がる場合もあるだろう。


問題の本質は”同じことを繰り返す人間の中にある、そうした心”―どこまでいっても、どんなに時代が変わってもそれは変わらない。

 

20世紀はこの衝動に駆られた「戦争の世紀」だったという認識は社会に定着している。

 

世界平和に向けての地道な対話を理想論として片付ける場合がある。

直接会って話すという外界の縁によって、お互いの中にある共存の心、信頼の心を呼び起こすのである。こうした対話が広がれば、自ずと信頼と平和を願う心も広がる。

そう信じて行動を起こしている人を誰も批判することはできない。

ごらん膝まづき 神様に祈る

人々を踏みつけて
権利も自由も平和も願いも

粉々に踏みつけて
誰も求めてたわけじゃないさ 

けれども誰もが 気付いていたはず
(松山千春「いつの日か」/1985年)

戦争、紛争なんて誰も求めちゃいない。そしてそれらを引き起こす原因は、いつも人間の中にあると気付いているはずである。



(2017年8月筆者撮影/広島原爆ドーム)
 

松山千春「最後のチャンス」

 

2001年5月12日、松山千春デビュー25周年記念ツアー初日、埼玉スーパーアリーナ。

 

横浜アリーナより大きいこの会場の1階スタンド席に入った瞬間、「25年経っても、こんなにも多くの方々が松山千春の歌を聴きに来ている!」―本当に嬉しかった。

 

この時聴いた「最後のチャンス」(1998年/アルバム『笑っていたい』収録)は、今でも映像でよく覚えている。歌のバックに世界情勢を伝えるような映像が流れる。歌と映像がよくマッチしていた。

 

「強い者に媚びを売り 弱い者を見下して」戦争と言う愚行に走る。その結果、「無駄な戦いを続け 人は傷付き疲れる」「山はあわれな姿に 海は赤く血に染まり 君の大切な空は 黒く垂れこめ」てしまう。

 

いつの日か戦争、紛争がない時代が訪れるように。世界に平和が訪れて欲しい。単に戦争、紛争がない合間の時期を「平和」と呼ぶような、結果論的で消極的なものではない。

世界の人々がお互いを尊重し合い、その国や地域の問題を我がこととして引き受けて、それぞれ今いる場で平和構築のための行動を起こす。

「誰も彼もが笑顔で暮らしていられる そんな日がくる」ことを夢見て。

 

 

 

「最後のチャンス」

やがてこの世界中の 誰も彼もが笑顔で
いつも暮らしていられる そんな日がくる

無駄な戦いを続け 人は傷付き疲れる
君が愛した人さえ どこにいるのか
山はあわれな姿に 海は赤く血に染まり
君の大切な空は 黒く垂れこめ

もし この世に神様がいるのなら
僕 いつでも 深い祈りを捧げる
だから 最後のチャンスを みんな失いかけてる
心 取り戻すための 時を与えて

自由 それはわがままに生きて行く事ではなく
認められたい誰かを 認めなければ
強い者に媚びを売り 弱い者を見下して
そうさ 自分自身さえわからなくなる

もし この世に神様がいるのなら
僕 いつでも 深い祈りを捧げる
だから 最後のチャンスを みんな失いかけてる
心 取り戻すための 時を与えて

やがてこの世界中の 誰も彼もが笑顔で
いつも暮らしていられる そんな日がくる




(2016年12月筆者撮影/長崎駅前)