<2021.9.22一部編集、再掲>

<2020.9.4記事>

 

SNS上での個人への誹謗中傷が大きな問題になっている。誹謗中傷に対して、毅然とした態度で臨み、誹謗中傷した本人に対して法的措置をとるという流れは以前よりも起き始めている。

 

時代の産物と言えばそうだが、ツールとしてのSNSの本質の一面として、自分より弱いと思った誰かを攻撃し貶めることで、自分のストレスを発散し安全を保つ人間の本性の負の側面を強く感じる。

 

匿名性がそれを加速しているのだろう。

 

作家の中村文則氏は、何か起こった時に社会や政策のせいにするのではなく、個人批判に結びつけたがる心理―『公正世界仮設』(この世界は公正で安全であると思いたい心理)が行き過ぎているとも説く(2020.8.26毎日新聞夕刊)。

 

(写真:東洋経済オンラインから)

 

ASKAの「月が近づけば少しはましだろう」

 

1995年2月にリリースされたアルバム『NEVER END』のラスト、11曲目に収録されている。もう四半世紀も前の曲。ファンの間で高い人気を誇り、数年前のASKAの楽曲人気ランキングでは1位だった。

 

ちなみにこのアルバムの1曲めは「晴天を誉めるなら夕暮れを待て」。こちらも人気が高い曲で、CDをリピートしているとこの2曲が続くため、このアルバムにはこの2曲しか入っていないのではないか?と思うほど強烈なインパクトを与えている。


「月が近づけば少しはましだろう」…きっと誰もが経験したことがあるであろうその時の心理状態を歌う。

私自身の捉え方では…

 

―ありふれた日常。会社で上司から厳しい言葉を浴びせられたのだろうか。帰宅し、その言葉をシャワーを浴びながらまた考える。引きずっている。いつもなら自宅に向かうその角を曲がれば忘れてしまうような、大した言葉じゃないけど、それが重なるとそれなりに自分の心に思い。

 

今で言えばパワハラか。一晩、泣きたいぐらい傷つき落ち込んだ。心が折れた。あんなやつなんて自分にとってはどっちでもいい存在のはずなのに。

 

そうしているうちに、もう出勤時間がやってきた。駅の改札を見ると、いつものように大勢の人たちが流れていく。

 

立ち上がる力もない。今日は欠勤。ベッドに転がってまたあの言葉を考えている。時間が経ち月が出始めるころになれば仕事に行かなかった罪悪感も、言葉から受けた苦しさも少しはましになるだろう―

 

そんな世界だろうか。

この歌の根底に流れるのは「言葉の力」。

「この指の先でそっと拭きとれるはずの言葉だけど 

積もり始めたら 泣けて仕方ない」

普段なら何のことはない言葉で、積もった埃を指先で軽くはらえばすむようなものかもしれないが、それが続くとやっぱり人は傷つく。一言でも傷つく場合もある。

 

現代で言えば、スマホの画面をスワイプしてしまえば済むはずの否定的、攻撃的なコメントも、それが積もり始めると心に刺さって、ずっと引きずる。ただ苦しい。自分の存在さえ消したくなる時もある。
 
一方で、その人のことを気にかけて、その人の気持ちになって温かな声をかけ続けるとそれが大きな力になってその人を励まし、勇気づけていく場合だってある。

 

人は言葉とともに生きている。言葉によって元気になる時もあれば、落ち込む時もある。それは言葉を受け取る側だけの問題ではない。

 

自分自身がどういう言葉を周囲の人にかけるか。どういう言葉を書くか。

言葉にその人の人間性が表れるのだろう。

 

 

 

いろんなこと言われる度に やっぱり弱くなる
いろんなこと考える度に Ah ah 撃ち抜かれて
恋人も知らないひとりの男になる

壁にもたれてもう一度受け止める
小さな滝のあたりで

角を曲がるといつも 消え失せてしまう言葉だけど

心の中では 切れて仕方ない


この指の先でそっと拭きとれるはずの言葉だけど
積もり始めたら 泣けて仕方ない

Ah wow wow woo…

ごまかしながら生きて来たなんて思わないけど
夢まみれで滑り込むような事ばかりで
毎日の自分をどこか 振り分けてた

僕の中を通り過ぎ行く人
ほんの 一瞬の人

あさの改札では 大勢の人が流れて行く
カーテンを引いて ベッドに転がる

静かに変わる時間を 閉じるように瞼を閉じる
月が近づけば 少しはましだろう

動きたくない身体を Wow 毛布に沈めて聞いてた Wow
鳴り止まないサイレンの音 胸の音なのか Wow

角を曲がるといつも 消え失せてしまう言葉だけど
心の中では 切れて仕方ない


この指の先でそっと拭きとれるはずの言葉だけど
積もり始めたら 泣けて仕方ない

静かに変わる時間を 閉じるように瞼を閉じる
月が近づけば 少しはましだろう

静かに変わる時間を 閉じるように瞼を閉じる
月が近づけば 少しはましだろう

Wow woo…少しはましだろう
Lu lu…泣けて仕方ない
Wow woo…泣けて仕方ない