<2021.9.12記事>

 

「9.11米同時多発テロ」から20年。日本時間の11日22時頃から現地で追悼式が始まった。

 

あの時私は何人かの友だちと、そのうちの一人の家で飲んでいた。彼のお父さんが「テレビをつけろ!大変なことが起きたぞ!」と興奮して叫んでいた。あの時飛び込んできた映像は忘れられない。

 

我が家の二人の大学生はリアルタイムでこの事件を知らない。あの時長女は1歳、長男はまだ生まれていなかった。

 

武力に武力で報復したらその復讐の連鎖は終わることがない。その連鎖は人間が持つ生命のひとつの傾向性から生まれる。もちろん、生命を大切にしようとする慈愛もある。

 

世界平和と言っても、結局は一人の人間から始まり、帰着するのだと思うと、ますます人間そのものに光を当てる見方や考え方、そしてより強い人間と人間のネットワークが必要なのかもしれない。

 

 

__________

 

<2017.12.2記事>

 

 

さいまたスーパーアリーナでの松山千春デビュー25周年記念コンサートは素晴らしかった。中でも「最後のチャンス」から「はまなす」へ繋ぐところはとくによかった。

 

「最後のチャンス」では歌唱する松山千春のバックに、街や山々、紛争などのイメージ映像が次々に流れた。この映像が歌詞の内容とマッチしていて、強いメッセージが伝わってきた。

語数少なく、抽象的な単語、大きな単語が使われる松山千春の歌詞だが、その歌詞が伝えるイメージにより近い映像を同時に流すことも、結構ありかなとあの時思った。

無駄な戦いを続け 人は傷付き疲れる

君が愛した人さえ どこにいるのか
山はあわれな姿に 海は赤く血に染まり

君の大切な空は黒く垂れこめ

 

もしこの世に 神様がいるのなら  

僕いつでも深い祈りを捧げる                                   (松山千春「最後のチャンス」)

 

日本武道館での松山千春デビュー20周年記念コンサートも素晴らしかった。私が参加した時にはまだ同記念アルバム『TOUR』発売前だったので、特に二部で披露された曲はその場が初めてだった。「時代」から「TOUR」へ繋ぐところはとくによかた。

 

今日もどこかで 戦いの中 

傷を負う人 死んでゆく人

そんな事は 気にもかけず 

平和すぎると アクビする人

 

ボタンひとつで 何度地球を 

破壊する気でいるのだろう
生きる権利も 自由も奪い 

愛する者を失うだけ

 (松山千春「時代」)

 

こうした歌詞はアルバム『明日のために』に収録されている「いつの日か」以来かなと、その時思った記憶がある。

先月(2017年11月14日)の東京国際フォーラムでのライブ。「目覚め」と「淡い雪」は本当によかった。


一人の人間に内在する大きな可能性と、その一人を支える身近な人たちを讃え、それらへの「目覚め」(気づき)を促す、穏やかな曲調ながら強いメッセージを感じる歌詞。

「淡い雪」はこれこそ松山千春の世界、これまでよりも一段歌詞の世界が深まっているように思う、見事な歌詞の世界。

無数の生命を讃え慈しむ。それを踏みにじる、これもまた人間が生命に宿す恨みや憎しみを、降り積もる雪が押し込め、やがて春になり雪が解けていくように、恨みや憎しみも消えて行け。

 

淡い淡い雪 この大地に眠れ  

雪よ雪よ雪 時を閉じ込め
憎む気持ちさえ 恨む心さえも  

この冬を越えて 消えるものなら
 

空しくて はかなくて 

人は何故に愛を忘れているの
幾千のけがれ無き 新たな命 はばたけ

 (松山千春「淡い雪」)

 

この2曲を続けて歌うだけで、充分すぎるほどのメッセージが伝わる。

 

余談だが、この2曲の間に政治トークを持ってきた。しかもテーマは改憲や靖国。語った時間の長さの問題ではなく、こうしたセンシティブなテーマをステージから一方的に語ることは、持論・異論があるが、客席から肉声では反論できない聴衆に大きなフラストレーションを溜める。

結局、それが爆発した聴衆から大きなヤジが入った。松山千春の耳にも届いて、トークを一瞬止めた。このステージのヤマ場だっただけに、それを誘引するトークを展開した松山千春とヤジった方双方に、本当にがっかりした。

ともあれ、今も世界では紛争が絶えないし、数百人が亡くなるテロも発生している。またいつ戦争が起こってもおかしくない緊迫した情勢が続く。身近なところでも、火災で一家が亡くなったり、飲酒のうえ猛スピードで運転し、19歳の命を奪うとんでもない輩が出たりと、憤りと悲しみは深まるばかり。


そんなニュースに触れる時、ふと上のような松山千春の歌が聞こえてくる。

いよいよ師走。社会が世界が人びとが、無事に安穏に新しい年を迎えられるよう祈らずにはいられない。

 

かけがえのない日々に 願いを込めて 

どうぞこの世が 平和でありますように

 (松山千春「TOUR」)

 

(宮城県石巻市・日和山公園/2017年8月筆者撮影)