去年の今日、2月23日、「松山千春のON THE RADIO」の放送日だった。去年の3月25日にラブソングばかりを91曲集めた『思い出』というアルバムをリリースしているが、そのPRの意味を込めて、収録予定曲を毎週かけていた。
この日かけた曲の中に「それだけの愛」が入っていた。
アルバム『ISHI』(1989年11月リリース)に収録。デビュー25周年記念に松山千春自身がセレクトしたベストアルバム『季節の旅人〜春・夏・秋・冬』(2001年3月31日発売)のDISC-3(秋)の10曲目にも収録されている。
「それだけの愛」をかける前に語っていた。
俺も自分で91曲選び出すのに、自分の楽曲を全部聴いた。「あれ、こんなふうに歌っていたんだ」、「ああ、この時にはこういう言葉遣いをしたんだ」…それがばぁーっと蘇ってきて、俺今までそんな詞とか曲とか、それよりも何よりも歌うことに自信があったんで、作ることにさして…と思ってたんだけど、違うな。俺は自分を勘違いしていたな。
この歌、アルバム『ISHI』の中でも「遠い記憶」「燃える思い」と並んで気に入っている曲で折に触れて、今日も弾き語ってみた。
歌詞もメロディも松山千春の世界そのもの。
「それだけの愛」、「いつでもいつでも二人でいたい」、それだけの愛。
寒い夜でも、二人肩を並べて遠くまたたく星を見つめて同じ時間が過ぎていくだけの愛。
心重ね体重ね、何ひとつ疑いのない時間が流れていくだけの愛。
どんなに季節を重ねても、二人がこの世と別れるその時までお互いを思い続けているだけの愛。
「やがて季節がめぐり姿変えても
老いてこの世と二人別れる日も」
この部分のメロディと歌いまわしは何度聴いてもいい。
若い時こんな思いをしたことがあった。
今ではこういう思いを向けるのはやっぱり家族。
男女であれ、家族であれ、恩師であれ、友だちであれ、縁と言うのは不思議なもので、偶然のように見えて必然のめぐり逢い。いつでもそれだけの縁。それほど深い縁。
「愛別離苦」という言葉がある。愛する人たちといつかは別れ離れていく苦しみ。誰も逃れることはできない。だからこそ一緒に過ごした日々が懐かしいし愛おしい。