昨晩(2月7日)放送のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」、最終回『本能寺の変』
諸説多数あるこの歴史上の大事件、基本的には「本能寺の変」を明智光秀の単独犯として描いていたと言っていいだろう。
「本能寺の変」には朝廷黒幕説、足利義昭黒幕説、イエズス会黒幕説、家康黒幕説などがあるが、以下の著作(記事自体は昨年11月に書いたもの)では、上に挙げた諸説、それぞれの問題点を史料に基づいて丁寧に解説し論破している。本書を読むと、「本能寺の変」に黒幕は存在せず、明智光秀の単独犯だったと理解できる。
ドラマは、諸説ある中で明智光秀「生存説」を想起させるようなシーンで終わっていた。個人的にはあのシーンに明確な「生存説」は感じず、駒の願いと思って観ていたが、やはり昨晩から私の友人たちのFacebookでは「生存説で終わった」とか「明智光秀はあの後(山崎の戦い)も生きていたんだ!」と「生存説」に乗ったコメントが出ていた。
「世の戦乱を収め、平和な世を作るために本能寺の変を起こした」という、ある意味明智光秀のイメージを変えたとも言えるこのドラマのクライマックスの後、生存説の賛否を再び生み出しそれに集約されてしまった感があった。
その意味では、個人的には明智光秀が巷を歩き去り、それを駒が追うラストシーンはなくてもよかったかな?とも思った。
その直前のシーン、義昭が当時を回想しているシーンでの義昭の言葉。
「世を作り治めていくのは志だ。大っ嫌いだったが織田信長には志があった。明智光秀にも志があった」(主旨)
あのシーンで終わった方がよかったような気がする。
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「陰謀の日本中世史」
呉座勇一/角川新書/2018年3月
本書の内容紹介欄(表3)
「本能寺の変に黒幕あり?関ヶ原は家康の陰謀?義経は陰謀の犠牲者?ベストセラー『応仁の乱』の著者が、史上有名な陰謀をたどりつつ、陰謀論の誤りを最新学説で徹底論破。さらに陰謀論の法則まで明らかにする、必読の歴史入門書‼」
たとえば、源頼朝と義経の確執について、私の認識は吉川英治氏の「新・平家物語」に描かれているものがベースにある。ざっくり言えば、義経の才能と功績に嫉妬した頼朝が義経を迫害し死に追いやった。義経は悲劇のヒーロー、といったイメージである。
本書はそれも細かな史実を積み上げ、当時の状況を俯瞰したうえで、そうではないと結論づける。
陰謀論の真打ちとも言える「本能寺の変」もしかり。とくに明智光秀が織田信長を殺害した動機について、ここに諸説入り乱れ、それが様々な陰謀論を生んでいる。著者は同様の手法で、また最新学説を取り入れながら丁寧に解きほどいていき、著者としての結論を述べる。
歴史に造詣が深く歴史に関する著作も多い、ライフネット生命創業者、現在立命館アジア太平洋大学(APU)学長の出口治明氏も自著「還暦からの底力」(191~192㌻)で本書を称賛している。
「呉座勇一氏は、本能寺の変をはじめとする日本中世史における数々の陰謀・謀略を取り上げ、歴史学の手法で分析した『陰謀の日本中世史』(角川新書)で、世の中に流布するもっとらしい陰謀論、トンデモ説の類を一刀両断に裁いています。(中略)
同書は、フィクションと歴史的な事実を切り分けることの大切さを知るうえで、とても優れた本だと思います」
これらの手法で論じられる内容はとても説得力があり、ある意味”陰謀論”を読むよりも面白い。
最終章「陰謀論はなぜ人気があるのか?」では、陰謀論が生まれる法則を列挙し、陰謀論に振り回されない歴史の見方、捉え方を呼び掛けている。