「2020年以降の高等教育政策を考える
グランドデザイン答申を受けて」
大槻達也・小林雅之・小松親次郎[編著]
桜美林大学出版会/論創社/2020年8月30日
文部科学省におかれている中央教育審議会は、我が国の大学をはじめとする高等教育機関のあり方や方向性を示すため、ある程度の期間をおきながら「答申」を発表し続けている。
その最も新しい答申は
「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン答申」(2018年11月発表)
いわゆる”グランドデザイン答申”と言われている。
その賛否は様々あるが、各大学などの高等教育諸機関はこの答申を具現化するかたちで、つまり国の意向に極力沿うよう、それぞれの政策を打ち出す場面が多くなっている。また国もそこに補助金を絡めて、目指すべき方向に政策誘導する傾向が強くなっている。
これまでにいくつもの重要答申が発表されてきたが、本書はそれらを振り返りつつ、それらの趣旨と方向性、それぞれの関連性などについて、もしくはあるひとつの視点から採り上げて、14名の高等教育関係者が執筆している。
それぞれの論考をまとめるのは難があるが、本書全体に対する個人的な感想としては、大変有益な一冊である。
いわゆる業界本と言ってもいいので、多くの人に読了を薦める類の本ではない。例えば大学生を子どもに持つ親御さんが、とくに本書の前半に掲載されている誰かひとりの論考でもいいので読まれると、我が子が学んでいる大学というものが置かれた位置や、これからどういう方向に進もうとしているのかなどが何となく分かる。