海なし県の山梨県の人は海を見ると嬉しくなる。私もそうだし、私の友達も多くがそう。
もうひとつ、見ているだけで満たされた気持ちになるのがやっぱり富士山。
久しぶりに富士山の全容が見たくなって、山梨県の忍野に行った。
小説家の吉川英治氏は、代表作のひとつである「宮本武蔵」の中で、武蔵が若き弟子に言った言葉として書いている。
『あれになろう、これになろうと焦るより、
富士のように、黙って、自分を動かないものに作り上げろ。
世間に媚びずに 世間から仰がれるようになれば、
自然と自分の値うちは世の人がきめてくれる』
学生時代から暗記している。「宮本武蔵」は十代、二十代…若い時に読んだ方がいい。
富士山を仰ぐと口ずさむ歌は松山千春「慕う」(2010年)。このパターンは私の中では定番で、自然と出てくる。
「今も志(こころ)に曇り無く 高き望みに憂い無く」
年齢を重ね、この先出来ることは限られてくる。この年齢になったからこそ出来ることもある。どうあれ、若い頃に抱いた夢、望みは今になってもまったく曇りなく、”かなうだろうか?””もう終わったかな?”などという憂いもない。
強く記憶に残る3回。
2010年3月29日開催の「東京厚生年金会館ファイナルライブ」での弾き語りの「慕う」。2012年8月4日に開催された「松山千春デビュー35周年記念 Summer Live in 十勝」(以下トレーラー映像/1分26秒時点から「慕う」一部)での「慕う」。
東京厚生年金会館ライブはチケットをファンクラブ抽選に申し込んで落選した。十勝ライブは、同じ日、札幌で仕事だった。仕事しながら、ライブの進行具合やセットリストが気になった。
コンサートツアー『慕う』。2010年11月18日、東京国際フォーラム、2部ラストでの「慕う」は松山千春の姿を映像で覚えている。初めて生で「慕う」が聴けた。
「恋しく思う」「懐かしく思う」 「離れがたく思ってあとを追う」「(ある人に)惹かれる、憧れる」(weblio辞書)…この歌のタイトル「慕う」はふるさとに対して全部の意味を含んでいるのだろう。
「今も志(こころ)にくもりなく 高き望みに憂いなく」…意訳すれば「夢」「決意」。もう一つ。「富士のように、黙って、自分を動かないものに作り上げろ」…「誓う」も含んでいると思っている。
『デビュー35周年記念 松山千春 Summer Live in 十勝』トレーラー映像
花は名も無く清らかで
流れる河は美しく
遠く遥かな ふるさと慕えば
にわかに風が 駆け抜けたようで
今も志(こころ)に曇り無く
高き望みに憂い無く
好きで離れた ふるさと慕えば
あふれる涙 ただとめどなく
都会の隅に生きてます
疲れたなどと言えません
せめての願い ふるさと慕えば
おだやかな空 変わり無き山
遠く遥かな ふるさと慕えば
幼き日々は 私の宝
幼き日々は 私の宝