(2023.8.7記事)
毎年8月になるといつも松山千春のアルバム『明日のために』を思い出す。1985年7月10日にリリースされている。もう38年前。
松山千春のキャリアの中でのアルバムの位置づけは、書くまでもないが、松山千春らが設立したNEWSレコードがこの年に倒産し、松山千春自身はアルファレコードに移籍、その移籍第一弾アルバムがこの『明日のために』
38年前の今頃は高校3年。大学受験、共通一次試験に向けて”天王山の夏”を迎えていた。高校の先生の勧めで、同じクラスの10人?の仲間たちと、山梨県内の避暑地で10日間?「勉強合宿」をした。仲間たちと朝から晩まで勉強漬け。分からないところがあるとすぐそこにいる仲間に聞く。38年経っても、いい思い出として生きている。
その「勉強合宿」に、カセットテープに録音したこのアルバムを持って行き、勉強の休憩時間に必ず聴いていた。「虹のかなた」は別格として、その次に気にっていたのが「街角」。思い出深いアルバムであり、忘れられない曲。
下のオリジナル記事に公式音源を挿入した。
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(2021.5.27記事)
まだ梅雨に入っていないと言うのによく降る。今日(5月27日)も、一時は街が雨に煙るほど強く降っていた。松山千春の雨にちなむ歌ではや「雨の夜」「雨の向うに」「置手紙」「自分なりに」などが浮かぶが、自分が気に入っているという点でもまずは「街角」「冷たい雨」「情景」。
去年の6月19日に「街角」について書いていた。
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(2020.6.19記事)
2020年6月10日の日経新聞コラム「春秋」が書いていた。
東京スカイツリーの展望台では重力の関係で地上階よりも時間が速く進む。1日あたり10億分の4秒、速く流れているという。ちなみに、物理的に時間は一定の速さで進むとは限らない。心理状態により速さが違うことも日ごろ体験している。
さらに「春秋」は言う。「コロナ禍で日常の時間の伸び縮みに改めて気づいた方もいるだろう。在宅で通勤不要だと午前が長い。公私の区別がつかず曜日の感覚をなくしていませんか。店を開けても客が来ないと時計の針は進まない。時間の大切さは不変である」
私の職場では4月9日からリモート・ワークが始まって今日でほぼ70日。来週から急遽通常の出勤体制に戻ることになった。一日単位で見れば、自宅での仕事は時間の流れが遅く、一日が長く感じた。曜日感覚や時間感覚もなくした。しかし振り返れば、あっという間の70日間だった。
今日はリモート・ワーク期間での最後の出勤日。所用でちょっと街中を歩いた。雨にけむり、静かに時間が流れる中、紫色の紫陽花は薄灰色のバックに一層映えていた。梅雨に入っていることに改めて気づく。ふと木々を見れば、新緑を越えて既に深い緑。時間は間違いなく流れている。
口ずさむのは松山千春「街角」
1985年リリースのアルバム『明日のために』のA面5曲目
ソフトな歌声でマイルドに歌う。前半、抑え気味なボーカルは、サビに入れば松山千春節全開。アレンジ(戸塚修)も含め、歌全体に漂う切なさ、哀愁、胸苦しさ…この雰囲気が変わらず気に入っている。
歌詞の世界に自分の気持ちを入れ込むことはないけれど、
「若いがゆえ 愛さえあれば 生きていけると 信じた二人」
が
「雨にけむる あの街角で おまえとふたり愛を育てた」
あの頃から流れた長く感じる時間にすがりつき、いつまでも引きずるような男心には共感する部分も確かにある。
男心を基準にすれば長い時間でも、現実には二人が別れてからそれほど長い時間は経ってはいないのかもしれない。
この曲、アルバムがリリースされた当時は高校3年。大学入試に向けて猛勉強の日々だった。
このアルバム、とくにA面の「クレイジー・ラブ」「愛を奏で」、B面の5曲全部、そして「街角」を聴くと、いつも変わらない鮮明さであの当時のシーンが蘇る。友達、高校の校舎、家族、ふるさとの景色…。そしてこのアルバムをリリースした当時の松山千春の状況、傷心も。
2020年3月末にリリースされた、恋愛の曲ばかりを91曲も集めたコレクションアルバム『思い出』に「街角」は収録されていない。
夢野旅人さんのデータベースによれば「街角」はまだ一度もライブで歌われていない。「打ち込み系だからあまりライブでは歌えない」といった趣旨の松山千春の発言が載っていた。
もちろん、あのアレンジだからこそあの当時を蘇らせるわけだけれど、それが難しいなら弾き語りでいい。とくかく一度でいいからライブで歌ってほしい。
「つのる思い 心に痛い 忘れられない」一曲である。