新敬語「マジヤバイっす」、中村桃子氏―「っす言葉」が人間関係を調整、というタイトルの記事が4月11日の日本経済新聞に掲載されていた。

 

言語学者、関東学院大学教授で、著書に『「女ことば」はつくられる』などがある中村桃子さんの「っす言葉」への見解を盛り込みながら、記事を進めている。

 

「そうっすね」「マジっすか」。体育会系の男子学生たちから広まった「っす言葉」。普通体の「だ」、丁寧体の「です・ます」に続く「『っす』という第3の選択肢で人間関係を調整している。社会が変わっているのかもしれない」と言う。

 

記事では「後輩が目上の先輩と話す時、『だ』では丁寧さを欠く。『です・ます』では相手との距離感が遠い。親しみと丁寧さを同時に表現する言葉として、『です』の短縮形である『っす』は広まった」と、その背景、心理状態を述べる。

 

中村さんは、教員として大学で接する若者たちは「みんな『っす』のネーティブスピーカー」「魅力的な言葉遣いで、自分も出ちゃう時がありますね」

 

言葉は時代とともに変化していく。現在進行形で浸透し変わり続けていく言葉を、今という時点でいかにとらえるか。学生たちの会話やネット掲示板、テレビCMなどを遡って見てみると、6年前には「『っす』は丁寧語ではない」との認識が圧倒的だったと言う。

 

それが現状では「もともと助動詞の『っす』が、『(こんに)ちわっす』では接尾辞に、『ういっす』ではあいさつの一部にと、文法的な位置づけさえ広がりを見せる」。

 

長く使われて定着した言葉を研究するのとは違い、「今この時を切り取った。10年後に同じことをやったら全く違う結果になるかもしれない」

 

「っす」には「丁寧さだけではない別の魅力もある」。

 

「auのテレビCMに登場する『鬼ちゃん(菅田将暉さん)』が連発する『っす』が『軽さ』の象徴となるなど、用法は広がり続けている。上戸彩さん、綾瀬はるかさんら、女性がCM内で口にする『っす』は、勢いや好ましさ、切なさまでも表現しようとしているという」。

 

なるほど。「っす言葉」。普通体の「だ」、丁寧体の「です・ます」に続く「っす」という第3の選択肢で人間関係を調整、という点は深く納得する。

 

私の周囲にも『「っす」のネイティブスピーカー』がいる。彼らは意識していないかもしれないが、20歳以上も年齢が離れた私に対して、親しみを込めて、そしてどこかに照れを隠しつつ「っす」言葉を使う。私としては、まったく違和感はない。かわいいな、と思うぐらいである。

 

私が社会人駆け出しの30年前は、「っす」言葉はあるにはあったが、恐れ多くて先輩や上司には使えなかった。言葉しかり、感覚しかり、知識もしかり。時代とともに変化し続ける。

 

あることを「正しい」「間違っている」と判断したとしても、それはあくまでその時点のことであり、ずっとその認識が続くわけではない。何につけ自分の中で常にアップデートしようという努力が必要である。

 

それをせずして、例えば自分の昔話しを”武勇伝”ぽく自慢たっぷりに若者に話し続けることなどは、無意識のうちに自ら「オッサン」の海にダイブしているのだろう。