新型コロナウイルスの世界的感染拡大の中、WHO(世界保健機関)が「パンデミックと言える」という認識を示したが、国の専門家会議メンバーのひとりは「世界の多くの地域で、合わせるとおよそ12万人が感染したと言われる中で、WHOとしても、パンデミックと言わざるをえない状況になったと推測する。日本においては、現時点では、感染の爆発的な拡大には至っていない状況で、冷静に、これまでの対策を確実に行っていくことが重要だ」と指摘している(3月12日NHK NEWS WEB要旨抜粋)

 

2月28日の日本経済新聞(夕刊)に「新型コロナとビル・ゲイツ氏」というコラム(十字路)が掲載されていた。リーダーの認識、視点、危機感と行動に学びつつ、


 もし1千万人以上の人々が次の数十年で亡くなるような災害があるとすれば、戦争よりも感染性の高いウイルスが原因の可能性が大きい」。米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏は2015年にこんな講演をしている。
 ゲイツ氏はビジネスから引退するにあたって財団を立ち上げ、世界の病気や貧困問題に取り組んでいる。中でも、感染病対策の分野は特に力を入れているひとつだ。
 講演では、人類は核の抑制に巨額の資金を費やしたが、疫病の抑制システムではほとんど何もしていないと指摘。その前の年に流行を許したエボラ出血熱を踏まえつつ、「我々は次の疫病のまん延へ準備ができていない」とした。
 パンデミック(世界的な疾病の流行)が起きれば世界の富は3兆ドル(約330兆円)目減りするとの世界銀行の試算を引用。その額に比べれば対策に必要な費用はわずかだと主張し、費用対効果の説明も加えた点ではビジネスで鍛えた鋭い嗅覚も感じさせた。
 ゲイツ氏は、その当時から世界は大きく前進していないとの思いがあるに違いない。今回の新型コロナウイルスによる肺炎に対して、動きは速かった。2月初め、財団としてウイルス対策費用に最大1億ドル(約110億円)を拠出すると発表。ワクチンや治療薬の開発支援に加え、アフリカと南アジアでの感染拡大の予防に重点を置くとした。
 歴史を振り返れば、疾病の流行は経済の仕組みそのものに大きく影響を与えてきた。米スタンフォード大学のウォルター・シャイデル教授の著書「暴力と不平等の人類史」によると、戦争、革命、文明崩壊と並んで疾病が、それまでの不平等をいわば暴力的に修正する機能を持った。
 疫病への深い認識と危機感を持つ強いリーダーの存在。それが政治だけでなく、ビジネス界にもいることが、その経済・社会を強く保つ理由になるようにみえる。(中萩)
 

 専門家会議メンバーの発言どおり、個人レベルではこれまで変わらない身近な対応を心がけていくしかない。当然、ビル・ゲイツ氏ほどの対応への射程は持てないし、同じレベルでは行動できないが、せめて仕事で自分が関わるエリアにおいては、未経験のまったく新しい事態の中で、情報を集め、皆で協議し、迅速に結論を出し動いていきたい。その渦中にいる。

 

 コラムにある、それまでの事態を「暴力的に修正する」とまでは言わないが、これまで当たり前に繰り返していた思考や行動、諸活動のあり様を見直し修正する機会になれば、これもまた大きな意味があるというもの。もちろん、世界の人々が無事で、一日も早い終息を祈ることを第一として。