野球評論家であり元プロ野球監督の野村克也さんが2月11日、虚血性心不全のため亡くなられた。改めてご冥福をお祈りいたします。

 

 ずっと”言動を追いかけて来た人”ではなかったが、折に触れて耳に入ったり読んだりする野村さんの言葉に納得し、すっきりしたことは幾度となくあった。

 

 日経ビジネスは2020年2月10日号の編集長インタビュー欄で、野村さんに人材育成・活用の要諦を語っていただいたばかりだったそうで、その時の内容を掲載している(インタビュー自体は2020年1月16日に行われたそうである)。

 

※以下のタイトルクリックで記事にジャンプします。

 

追悼 故・野村克也氏が最後に語った「再生」と「自信」

 

 その中で、そうだなぁと思うところが何か所もあった。

 とくに以下の2つ目の問答。「自分の役割を考え、正しい方向に努力した」というくだりは大いに納得した。

 自分と彼とは能力も性格も違うのに、その彼と比較して、彼と同じステージで負けまいとしているうちは自分の道は見つけられないし、良さは発揮されないだろう。それは努力を諦めるという意味ではなく、為すことに上下貴賤があるというわけでもない。自分をよく知り、自分の為すべきことを模索する中で、「ここだ」と思ったところで正しく努力する。その時はじめて自分の可能性を大きく開いていく。

 ”自分はどういう人間なのか””自分はどの道で生きるのか”―絶対的な自分の基準を持つことの大切さを野村さんの言葉から、改めて思った。

_________

 


大切なのは脇を固める選手


―阪神の監督時代、無名だった赤星憲広選手の獲得を進言するなど、才能を見る目も確かでした。


 ドラフト会議の前、彼の名前は編成からは全く出てなかったんですよ。当時の阪神には足の速い選手がおらず、彼のような選手が必要だと感じていたので取ってもらいました。


 赤星がリストに入っていなかったのはバッティングの問題でした。ただ、非力ではあるものの、全くダメというほどでもない。また、肩も強肩ではありませんでしたが、外野守備のときに猛然とダッシュしてくるので、ランナー2塁のときにホームに突入するのをちゅうちょさせるという強みもある。「足と肩にスランプなし」というのが僕の持論。チーム一の俊足というだけで戦力になると思いました。


 野球というのは4番バッターばかりかき集めても勝つことはできません。V9時代の巨人が強かったのは、王(貞治氏)と長嶋(茂雄氏)のONがいたからではなく、脇を固める選手が己の役割を理解していたからこそ。そういう選手がいるチームは強い。


 もちろん、4番打者とエースは必要ですよ。でもそれだけではなく、組織には他の選手のかがみになるような中心軸が絶対に必要です。

 

 

一般論として、会社というチームには常にスタープレーヤーがいるわけではありません。その中で結果を残すチームを作るにはどうすればいいと思いますか。


 意識改革じゃないかな。僕は編成に口を出したことはありません。手持ちの駒で戦うのが監督の仕事だと思っていたから。結果的に戦力に乏しいチームばかりを率いてきましたが、それでも勝つことができたのは、選手に考えることを求め、選手がそれに応えてくれたからだと思います。
 

 プロ野球に入るような選手は、アマチュア時代はみんなエースで4番です。でも、プロでみんながみんな4番を打てるわけじゃありません。その時に、自分の生きる道をどう見いだすか。そこは自分で考える必要がある。指導者の役割は、その手助けをすることです。
 

 例えば、ヤクルトの宮本(慎也氏)。入団当時は典型的な守備の人で、打撃面は特に期待していませんでした。それでも、2番打者として活躍できるように、バントや足の速い走者が塁に出ているときのバッティングを考えるように求めた。彼が2000本安打を達成するまでの選手になったのは、自分の役割を考え、正しい方向に努力したからです。

 

(写真:NHK NEWS WEB)