<2023.1.19 ILで公式音源挿入>

<2020.2.6記事>

 

 

寒い朝。今日(2020年2月6日)がこの冬一番で最後の寒波らしい。

 

今日は父の命日。去年(2019年)の今日の夜、逝去した。

 

早朝、父のことを知る友だちから「今日はお前のお父さんの命日だな。ありし日のお父さんを思って、改めてご冥福を祈ったよ」とLINEが来た。本当に有り難い。

 

朝6時45分、「春の足音」(1982年4月リリースのシングル「夜よ泣かないで」のB面/シングルコレクションアルバム『起承転結Ⅲ』収録)を弾き語りした。

 

リリース前にラジオから流れたコンサート音源で聴いて以来大好きな曲。

 

「街」「夕焼け」「私の明日には」「木枯しに抱かれて」「夜」「黄昏」

 

20代前半の青年が書いたとは思えないこれらの歌詞の中にこそ、松山千春の良さが詰まっていると感じる。

 

(2018年1月23日 筆者撮影)

「春の足音」…

 

「大空と大地の中で」「この道寄り道廻り道」のように、辛く苦しいことはあるけど、負けずにまた歩き出そうという直接的な表現は見当たらない。

 

「ついてないな… そんなことを つぶやくなんて とても悲しい」…”だからもう過去のことを悔やむのはやめよう”と自分の中でイメージする。

「もどることは 出来ないことと わかっていても つい振りかえる」…”こともあるけれど、もう振り返るのはやめよう”と聴きながらイメージする。

 

「通りすぎた想い出たちに 笑われぬよう身がまえて」…”ともかくまた歩き出そう”と聴いていて思う。苦境の中で力を蓄える一人の人間が浮かんで来る。 

ご存知のとおり、桜が春に見事な花を咲かせるためには、休んでいる樹を眠りから覚ます「休眠打破」が必要である。休眠を打破するものは冬の厳しい寒さ。厳しい寒さがないと、あの美しい花々を咲かせることは出来ない。


逆境・苦境は、実は自分の中にある力を引き出し、新たな自分を開拓するためになくてはならいものという捉え方は広く浸透している。

何もかも埋め尽くすほど降り続く雪、冷たい雪。寒い冬。苦しい逆境。もがく日々。その中で春が目覚める。

 

「誰ひとり 気付いちゃいない 短い 春の足音」

 

花を咲かせるずっと前、雪の下で生まれた春の小さく短い足音。

誰も気付いてはいない。気付こうと気付かれまいと、誰が見ていようと見ていまいと、無数の花々を咲かせゆく春の誕生の音である。

必ず春は来る。必ず花が咲く。そう信じて今を耐える、前向きな歌である。

 

歳を重ねた松山千春が歌う「春の足音」

 

誰一人気づいちゃいなけいれど、寒さに襟を立てながら、ライブで聴きたいとずっと待っている。

 

 

頬をなぜた 冷たい風
それほどさびしいわけじゃないけど


若くないな… そんなことを
つぶやくなんて とてもおかしい


通りすぎた想い出たちに
笑われぬよう身がまえて


衿を立てた その指先で
白い雪が 舞い散る


足をとめて 手をさしのべ
落ちては溶けゆく雪を見つめ


ついてないな… そんなことを
つぶやくなんて とても悲しい


もどることは 出来ないことと
わかっていても つい振りかえる


知らず知らず 歩いた道を
白い雪が かき消す

 

ふり続け ふり続け
何もかも 埋めつくせ


誰ひとり 気付いちゃいない
短い 春の足音