<2024.02.28>加筆
<2022.01.11>公式音源挿入+加筆
<2020.01.10>起稿

 

 

この歌のタイトルは「マリア」としか出てこないことが多い。タイトル、何だっけ?…「兵士の詩」と思い出すまで結構時間がかかる。1曲の中に24回も「マリア」が出てくるのだから仕方ない。

 

松山千春 「兵士の詩」


2003年5月リリースのシングル「都会の天使」のカップリング。「起承転結」は「10」に収録。

 

メロディもアレンジもとても気に入っている。アレンジは夏目一朗氏。スリーフィンガー奏法のアコースティックギターの音、とくに6弦、5弦あたりのベース音が心地よく響く。夏目一朗氏がここでもいい仕事をしていると思う。

 

ライブでは2015年10月1日、ツアー「真っ直ぐ」の初日、府中の森芸術劇場で聴いた。この時はステージ向かって左側、前から6列目だった。

 

 

平和への祈りの象徴としての「マリア」は理解したうえで、これほど繰り返さなくてもいいんじゃないかなとも思う。

とてもいいテーマと内容で作っているのだから「マリア」を6回ぐらいにして、あと18回分54文字で別の言葉を紡ぎ出し、歌詞を練り上げればもっとよくなったと思う。

 

「いつの日か」(アルバム『明日のために』収録)

「時代」(アルバム『TOUR』収録)

「TOUR」(同)

「最後のチャンス」(アルバム『笑っていたい』収録)

「淡い雪」(アルバム『愛がすべて』収録)

「兵士の詩」

 

…松山千春が平和への願いを込めたと感じる歌で好きな曲たち。

 

~シングル「宇宙のはるか」がリリース(2001年10月21日)された際、スポーツ紙に「千春、反戦歌」との大きな活字が躍り、松山千春のコメントとして「今こそアーティストたちは才能を結集すべきだ」(要旨)との言葉と、歌詞の最後の部分、「とどけこの想い 宇宙のはるかへ」だけが掲載されていた。

 

この歌がその前月の9月11日にあのアメリカ同時多発テロが発生し、それを前提としていることは明らか。

 

平和へのメッセージを込めたと言う。この曲を好きな方には申し訳ないが、私としてはどこからどう聴いてもよくあるラブソング。

 

コアなファンであれば、ライブやファンクラブ会報、ラジオなどでその楽曲が作られた真意や意図を本人の言葉で見て聞く機会は多いだろうけど、ふとラジオから流れてきたこの歌を聴いた方々は「反戦・平和への願い」を歌ったと少しでも感じるだろうか?

 

やっぱり作品勝負。基本は創り出された作品から伝わるものが第一でありすべてだと思っている。

 

歌詞とは別に、実はこういうメッセージを込めたんだ、と言ってしまえば、どんな歌であっても制作者の意図後付けでなんだってそう言える。

 

9.11直後は著名人、知識人、アーティストなどからの発信、発言に世間の耳目が集まっていた。

 

松山千春を聴かない人が、たまたまその歌を聴いて「いい歌だな。平和への願いが伝わってくる。誰が歌ってるんだ?」―ああいう時こそ、そう言ってもらえる歌を作って欲しかった。また、それまで松山千春を一切聴かなかった人が聴き始めるきっかけになれば…~

 

「兵士の詩」、この歌の画竜点睛は言うまでもなく

 

僕が恐れるのは 戦車ではなく

何度もくり返す 人の心

 

というフレーズだろう。

 

戦争を繰り返す「人間の愚」の本質を端的に表現している。過去の偉人も文豪も詩人も、平和運動家も宗教者もみなこの「愚を繰り返す人の心」を見つめその変革に挑戦してきた。

 

「マリア」を除いた歌詞の一部

 

君を守るために 僕も出かける

声にならない 声を届けて

ただひたすらに 祈りを捧げ

いつの日かまた 愛する人と

 

これから紛争、戦争に派遣されていくであろう一人の男性の気持ちを通して、松山千春の平和を願う心伝わる佳曲である。

 

 

2022年2月27日放送の自身のラジオ番組(「松山千春 ON THE RADIO」)で次のとおり語り、「兵士の詩」をかけた。

 

(ウクライナの情勢を見て)はがゆい思いをしてるよなぁ。俺だってあんなニュース見せつけられたり、いろんな情報が入って来るたびにさ、”ん~、自分は無力だな。何もしてあげることができないな…。”

せめて、プーチン批判、独裁者批判、(…)(世界のいくつかの国に独裁者と呼ばれるリーダーがいるが)そのリーダーたちに俺はいつも言ってやりたいんだけど。“お前、いつか死ぬよ。お前あと何十年か経ったらどうせ死んじゃうんだぞ”…そしたらせめて政治家として、国のリーダーとして、今頑張れることは、自分が亡くなってからでも国民が平和で豊かな暮らしができる、そういう政策をしっかりと考えてくれないか?

もし俺がウクライナで歌っていたら、きっとギターから銃に持ち替えて、戦っているのかもしれません。あの、口では何でも言えます。“どんな時でも俺は歌う”とかな。けど、親、きょうだい、親戚、また、愛する人たちが命の危機に遭っている時にやはり自分は、銃を選んでしまうのかもしれない…そんな弱い男だ、って言われたらそれまでですけど。

 

さらに、2024年2月25日放送の同番組。前日がロシアのウクライナ侵攻からまる2年という日にちなんで次のとおり語り「兵士の詩」をかけた。

 

これ以上人々が亡くなるのは見たくない。外交で、話し合いで紛争終結の糸口を見つけて欲しい(要旨)。

 

日本も、中国・台湾問題、そして北方四島の(…)問題、いろんなものを抱えてますから、この先どんなふうになっていくか、分からないですけど、ぜひとも外交努力、これからも頑張ってもらいたいなと思います。しかし、いざロシアが北方四島から北海道へというかたちになったら(攻めてきたら)「俺はどうしよう…」って、いつも思うんだよな。ん~、やっぱり戦うのかなぁ。難しいとこだな。

 

 

フォークシンガー松山千春としてもっともっとこういう歌を生み出して欲しい。”フォークシンガーとしての歌を聴いてもらいたい”と言っているライブの二部で、もっともっとこういう歌を歌って欲しい。

 

 

 

僕の胸の中で 眠りつく人
いつまでもこうして 抱いていたい
マリア マリア 愛する人が
マリア マリア 僕にはいます
マリア マリア 声にならない
マリア マリア 声を届けて

僕が恐れるのは 戦車ではなく
何度もくり返す 人の心
マリア マリア ただひたすらに
マリア マリア 祈りを捧げ
マリア マリア いつの日かまた
マリア マリア 愛する人と

君を守るために 僕も出かける
おだやかな寝顔を 胸に抱いて
マリア マリア 愛する人が
マリア マリア 僕にはいます
マリア マリア 声にならない
マリア マリア 声を届けて