重複になるが、松山千春は1985年春、コンサートツアー1985 「虹のかなた」 の中で、弾き語りで、痴呆症が始まったお父様との思い出と思いを綴った曲を歌っている。ファンの皆さんの間では「父へ」というような推題で認識されている。松山千春らしさ溢れる優しい歌である。
それを私は山梨県民文化ホール(当時)で聴いた。同ホールでの開催をぎりぎりで知って、大学受験態勢に入っていながらも、ここだけは!と駆けつけた。
歌っている最中にマイクスタンドが徐々に下がってきた。松山千春が歌い終わって「俺は寝て歌おうかと思ったぞ」と言っていたのを覚えている。
おぼろげながら、黒いギターだった記憶があるのでヤマハの「天地」だったと思う。
とても感動して、その直後発売されたアルバム『明日のために』に入るものと楽しみにしていたら、結局未発表に終わった。これまで何かの機会を通じて聴いてきた松山千春の未発表の歌たちの中で、いつか何らかの形でまた聴きたいと一番強く思う一曲である。
「いくつもの季節が あなたを変えてゆく」
生きるうえで様々なことに直面する。老いていくこと自体もそうだろう。
病気になることも、やがて生を終えることも、全部自分の人生そのもの。
古来多くの先哲が、生き老い病み死ぬという人間の根源的なテーマを見つめてきた。
良くも悪くも、時がすべてを変えていく。
去年の昨日(1月3日)、家族で父の見舞いに行っていた。その後、2月6日に逝去しているから、父の最後の一か月だった。
さて、あと数日で私も52歳。時は流れる。
何度も同じこと話すあなたに
少し驚いただけ
いいよ何度でも答えてあげる
僕ここにいるから
いくつもの季節が あなたを変えてゆく
僕が見えますか その手僕に
届くといいのだけれど
子どもたちのため体も心も
少し疲れたのかな
教えてください
何をすれば あなた喜んでくれる
いくつもの季節が あなたを変えてゆく
僕が見えますか
その手僕に届くといいのだけれど
覚えていますか あなたにしかられ
涙流したことを
寒い夜にはあなたの胸で眠り
夢を見てた
覚えていますか あなたに連れられ
みんなで帯広へ行き
最後のしたこと パチンコしたこと
食堂でご飯を食べた
いくつもの季節が あなたを変えてゆく
ねえ、僕が見えますか
震えるその手届くといいのだけれど