1985年6月28日に開催された松山千春コンサートツアー’85春 「虹のかなた」。
全20公演。当時の松山千春のツアーとしては小規模だった。
ツアーラストは山梨県民文化ホール。当時高校3年、大学受験態勢に入っていたが、ここだけは参加した。
このツアーでは通常アンコールは2回。あの夜もアンコール2の「長い夜」で公演が終わったかに見えた。私は1階席だったが、おそらく1/3ほどのお客さんは会場を出ていった。「もう、帰っちゃうの?」と思ったことを覚えている。
おそらく、この夜も本来これで終演だったはずである。そういう空気は確かに会場にあった。
その後も一部ファンの皆さんは帰らない。私も含めて残っていたファンの皆さんは全身で「千春コール」を送っていた。そのうち自然と皆さんがステージに向かってなだれ込み始めた。あの熱気、と言うよりも気迫、松山千春への思いは今思い出してももの凄いパワーだった。
押し寄せた時、私はステージ向かってセンターよりの左側、前からだいたい3列目ほどだったと記憶する。ステージ前は満員電車状態だった。押し寄せてもまだ「千春コール」が続き、突然緞帳が上がり「旅立ち」の前奏が始まった。もの凄い歓声の中、松山が四たび登場した。
すぐそこに松山がいた。素肌にジャケット的なものを羽織っただけの格好だったことも記憶している。
NEWSレコード倒産、アルファレコード移籍直後のツアーである。松山の傷心状態は客席からも分かった。あの夜、本編では「ショックでこの俺が歌う気になれなかった」と正直に語っていた。様々な思いがよぎったのだろう。
アルバムリリースもツアーの告知もままならなかった。この夜はかなり空席が目立った。そんな中でも集まってくれたファン、ここまで残っていてくれたファンを見れば自然と感極まるだろう。「旅立ち」が歌えなくなった。
そこからは自然とファンの皆さんだけの大合唱が始まった。皆さん、号泣しながら歌っていた。今こうして思い出しながら書いていても背筋がぞくぞくしている。涙が溢れそうになる。
松山千春歌わずとも、ファンの皆さんと一体となった、優しい光に包まれたような空間だった。
このエピソードとは若干シチュエーションが違うものの、2日前の12月19日、名古屋公演2日目のアンコールで似たような場面があったと見聞きして、34年半前のあの「旅立ち」の大合唱を思い出した。
1985年6月28日 @山梨県民文化ホール
■セットリスト
~イントロダクション~
01. 愛を奏で
02. 愛にまぎれて
03. 男と女
04. 愛しているから
05. On the Radio
06. ナイト・エンジェル
(ファーストフレーズあり)
07. ひとりじめ
08. 君の友達
--インストゥルメンタル--
09. 君のために作った歌
10. 父へ~覚えていますか~
(未発表曲・仮題/弾き語り)
11. ひとりぼっち
12. 虹のかなた
13. 明日のために
---encore01---
14. 夢の旅人
---encore02---
15. ナイト・エンジェル
(ファーストフレーズなし)
16. 長い夜
---encore03---
17. 旅立ち
※セットリストは「夢野旅人」さんデータベースから