人生を戦う同志…異業種の一流の方々との交流で磨いた感性【権藤博の「奔放主義」】
2019年12月07日 日刊ゲンダイDIGITAL
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 私事で恐縮だが、2日に「野球殿堂入り祝賀パーティー」を開いていただいた。約200人の出席者の中には歌手の松山千春さん、TUBEの前田亘輝さん、日本プロゴルフ協会の倉本昌弘さん、芸能プロダクション社長の周防郁雄さんら野球関係者以外の方も多く、会場にいたメディアの方が「そうそうたるメンバーですね」と感心していたとあとで聞いた。

 集まっていただいたのはすべて、私が敬愛し、尊敬する方々ばかりである。会の挨拶でも、「これだけの人が集まってくれた。それが一番。私の最大の財産は友達以外にありません」と言ったのは、偽らざる本音だ。

 現役選手として、指導者として、これまでさまざまな業界の方にお付き合いをいただいた。野球しか知らない私にとって、それぞれの世界でトップを極めた方々と一緒に遊び、話をするだけで大いに刺激を受けた。勝負する場所は違えど、みな純粋に人生を戦っている同志――。勝手にそう思って、いろいろなことを吸収した。

 プロ野球は短いオフに入った。今の選手は真面目で意識が高く、すでに来季に向けたトレーニングを開始している選手も多い。それはそれで結構なことだが、異業種の人たちと積極的に交流を持つことも立派なトレーニングになる。

■ハッとする瞬間

 私は横浜の監督時代、前出した松山千春さんを「陰のヘッドコーチ」と呼んだ。野球や采配のアドバイスを得たわけではもちろんないが、彼の生き方、考え方、ものの見方などは、組織をつくるうえで大いに参考にさせてもらった。

 その松山さんに引き合わせてもらった、天台宗の名僧・酒井雄哉師(故人)からもさまざまな「気付き」を得た。

 私の座右の銘になっている、「無理せず、急がず、はみ出さず、自分らしく、淡々と」は、酒井さんの教えを自分なりにアレンジしたものである。監督時代は、この座右の銘を書いた紙を常に野球帽の裏に忍ばせ、どうしても無理をしたくなる試合展開になったときは、帽子に手を当てて「無理せず、急がず……」と自分に言い聞かせた。この教えがなかったら、あの1998年の横浜日本一はなかったと思っている。ソニーの元取締役で「ミスター・ウォークマン」と呼ばれた黒木靖夫さん(故人)も刺激的な方で、何度も私に「ハッとする瞬間」を与えてくれた。

 そうやって自分の感性を磨いてきたのだ、と改めて思った。現役選手諸君にも短いオフを有益に過ごしてもらいたいと思う。

(権藤博/野球評論家)