いつ頃だった記憶がないが、昔、親父が自宅近くの食堂に連れて行ってくれた。

 

当時は、今のようにラーメン専門店も、ラーメンブームもない。

普通の定食屋みたいな店に、だいたい普通にラーメンがあった。

 

親父がラーメンを頼んでくれて

 

「食え」

 

と私に丼ぶりを向けた。

 

いつだったか、ブドウ園を営んでいた親父が言った。

 

「農家を継ぐ必要はない。お前が行きたい道に進め。好きなようにやれ」

 

そのシーンと言葉だけ今も鮮明に覚えている。

 

(永福町にある大勝軒の中華そば)

 

馬場俊英「ラーメンの歌」

アルバム『LP1〜キャンディー工場』(2013年10月リリース)のSIDE1の6曲目。

 

同アルバム制作ノートには次のような本人コメントが記載されている。 http://www.babatoshihide.com/candyfactory/note.html

 

06 ラーメンの歌
ホームページ上でプロデューサーの須藤晃さんと「仁義なき戦い」という公開往復書簡を期間限定でやっていたときに「ラーメンの歌っていうタイトルもいいね」という話題になりこの曲を作りました。僕自身もラーメンが大好きなのでが、ラーメンはどこか日本の国民食みたいなところがありますね。嫌いな人もいるかも知れませんが、子供や学生からお年寄りまで多くの人に愛されて。部活帰りのラーメン、下宿で食べたインスタントラーメン、仕事帰りのラーメン屋では餃子とビールと、お酒を飲んで最後にみんなでラーメン。温かいスープを飲み干せばなんだか幸せな気分になりました。遠くを見つめたその向こうに素晴らしい明日があるじゃないかという感じ。いつでも僕らのそばにいた友達のような存在。お腹がいっぱいになって心に灯る説明のできない希望の光。時代を分かち合った友人。そんなラーメンの歌です。曲のほうはBruce Springsteenの「Thunder Road」みたいにしたかったんですがあんまりならなかったというか、途中からそれはどうでもよくなりました。コンサートでみんなで「ラーメン!!」って叫ぶのが楽しみです。

 

 

 

つまらない嘘をついて いつまでも泣いていた

駅前の角の並び 路地裏のラーメン屋で

もういいから早く食えと 隣で親父が言う

しゃくりあげながら すすりこんだ 

あのラーメンの歌

 

初めての給料日にも 気がつけばここにいた

ビールを一本頼み 独り 餃子で乾杯をした

自分で稼いだ金で 自分のラーメンを食べる

つまらない味の 平凡な味の 

最高のラーメンの歌

 

チャーシューが1枚と メンマが4、5本と

刻んだネギと海苔だけで 他に何がいるだろう

ラーメン! スープを飲み干せば

ラーメン! 明日が笑い出した

もう少しやってみよう 

最後まで頑張ってみよう

聴こえるよ あのラーメンの歌

 

初めてのデートもここに 君を連れてきた

テーブルの席に2人 向い合って座ったよね

なんにもなかった あの頃の僕ら 

お金なんていらなかった

美味しいって君が笑って 

そこで僕は未来を決めた

 

夢がひと切れと 涙が2、3粒

刻んだ日々と汗まみれの ありふれた人生の歌

ラーメン! スープを飲み干して

ラーメン! ふたりで笑い出した

僕と結婚して欲しい 死ぬまで愛してる 

君だけを ああ青春の歌

 

 

嫌われても煙たがられても

叶えたいことがある

でもやりきれない行き止まりの夜

またラーメンをすすれば

やりたいように自由にやれと 親父の声がする

悲しくて 切なくて 悔しくて 

みんな馬鹿野郎だ 

あのラーメンの歌

 

チャーシューが1枚と メンマが4、5本と

刻んだネギと海苔だけの それだけの愛情で

ラーメン! 涙を呑み干して

ラーメン! すべてを受け入れよう

俺はまだやれる まだまだ頑張れる 聴こえるよ

 

ラーメン! 今日も夢がひと切れと

ラーメン! 涙が2、3粒

スープを飲み干して 明日に乾杯をしよう

聴こえるよ あの青春の歌

 

聴こえるよ ラーメンの歌