長渕剛「東京青春朝焼物語」

1991年12月リリースアルバム『JAPAN』の11曲目(全12曲)。

 

編曲家・瀬尾一三氏とがっちり組んで作り上げたアルバム。

私の中では、長渕剛のアルバムではこの『JAPAN』がいまだにベスト。次に『Stay Alive』

 

「とんぼ」や、後に発表される「東京」などと並ぶ、地方から出てきて東京で頑張ろうとする人、今も頑張る人を励ますように歌う。

 

具体的描写に富んだ歌詞。

「井の頭線で五つめの駅」というのは新代田駅らしい。

 

この歌詞の経験に100%合致する人はそうそういないのかもしれないが、ここまで具体的に歌うと、どこか自分の経験と重なる部分があるものだ。

 

重なった自分の過去の情景を歌に託し、心境は歌そのものの世界に入る。

 

「今日から俺 東京の人になる  

のこのこと 来ちまったけど
せっせせっせと 東京の人になる」

 

 

その時、長渕剛の歌は、聴く人を大きく勇気づける。何度聴いたことか。

 

長渕剛、中期・・・明らかにデビュー後数年の初期ではなく、かと言って当然現在でもない。

やっぱり中期。長渕剛、中期の名曲である。

 

 

両足が鉄の棒のように 痛かった

お前と二人で不動産屋を廻った

 

はり紙を 何度も何度も なぞりながら

井の頭線で五つめの駅で降りた

 

愛想の悪い酒屋で 俺は缶ビールを買った

植木鉢の下に 鍵を置く事に決めた

 

荷ほどきできない ダンボール箱を背中にして

俺たちは えびのように丸くなった

 

今日から俺 東京の人になる

のこのこと 来ちまったけど

今日からお前 東京の人になる

せっせせっせと 東京の人になる

 

 

二人でおんぼろの自転車にのり

野良猫の“チロ"を お前は拾ってきた

 

不釣合いな花柄のカーテンには困ったけど

南向きの窓が たまらなくよかった

 

豆腐屋のばあさんは ゴムのエプロンに長靴で

いつも そこら中に 水をまいていた

 

「ごめんよ」が

このばあさんの いつもの挨拶で

そこを通るたびに 笑ってた

 

今日から俺 東京の人になる

のこのこと 来ちまったけど

今日からお前 東京の人になる

せっせせっせと 東京の人になる

 

 

カンカンと遠くで 踏切が鳴いてた

夕暮れ時の雨は 嫌だった

 

つっかけを履いたまんま 女ものの傘をさし

角のバイク屋へ空気入れを借りに行く

 

鉄柵の向うからは 空が見えなかったけど

暮らすのに何の理屈も いらなかった

 

ただ初めて お前の台所に立った背中を

抱きしめたのは ささやかな俺の覚悟だった

 

今日から俺 東京の人になる
のこのこと 来ちまったけど
今日からお前 東京の人になる
せっせせっせと 東京の人になる