(↑写真と以下の記事内容とは関係ありません)

 

玉置浩二や高橋真梨子は…コンサートから透ける歌手の葛藤
11/1(木)   日刊ゲンダイDIGITAL


 ドタキャン騒動も一段落。何事もなかったように沢田研二のコンサートは盛況が続いているが、騒動前に完売となったチケット。来年も同じ人気を維持できるかは未知数。

「人気は水物。先のことはわからない」のが歌手の仕事とはいえ、沢田だけでなく、会場の大小はあれ、ソロコンサートで常に会場をいっぱいにできる往年の歌手は数えるほどしかいない。

 男性歌手なら小田和正、玉置浩二、松山千春。女性なら高橋真梨子(写真)が人気を誇る。共通点もある。歌唱力は言うまでもないが、ヒット曲の多さ。歌以外のバラエティー番組への出演もほとんどしない。生歌を聴かせるだけでお客を魅了する。


 

 かつてNHKで沢田と玉置のビッグ共演番組が組まれていたが、「昔のヒット曲は歌いたくない」と沢田が拒否。実現しなかったといわれるが、その後の2人の活動も対照的。

 玉置は安全地帯のボーカルからソロになり、数々のヒット曲を出した。一時、青田典子との再婚など女性問題でメディアの主役になることもあったが、今はコンサート中心に歌手活動に専念している。昔のヒット曲も歌うが、往年のファンのために年々、進化している。オーケストラや合唱団をバックに歌うなど、リピーターを飽きさせることがない。

 もっともチケットが取りにくい高橋もしかり。沢田と歌謡界で同時期に活動していた高橋はペドロ&カプリシャスの2代目ボーカルとして注目された。その後ソロとして「桃色吐息」などヒット曲を連発したが、テレビの露出は厳選した歌番組しか出ずにやはりコンサートが中心。「紅白」も「大晦日に拘束されたくない」と一時は拒否した時代もあったが、最近は毎年出場。紅組のトリも務める。

 NHK関係者によれば、「沢田は昔の曲を歌いたくないのが出演拒否理由ですが、高橋は理解を示している。中高年は高橋のヒット曲を聴きたい人ばかり。視聴率のためにも紅白に絶対欠かせない歌手です」という。

 コンサートでも高橋なりの工夫がある。自身のヒット曲だけでなく、昭和の男性歌手のヒット曲をアレンジ。沢田のヒット曲も玉置の名曲も歌い、CD化までしている。

「高橋は歌手として今の自分の立場をわかっているから、アリーナなど無理せず中ぐらいの会場。歌の選曲も含め常にお客さんが満足してもらえる構成」(音楽関係者)

 歌手がファンのニーズに合わせるか、ファンが歌手に合わせるのか――。

 スター歌手のプライドと意地の葛藤が垣間見られる。

 

(二田一比古/ジャーナリスト)