ご存知のとおり、【フィルターバブル】(英語:Filter bubble)とは、アメリカのイーライ・パリサー氏が用いた言葉で、インターネットの検索サイトが持つアルゴリズムによって、各ユーザーの嗜好に合った情報しか表示しなくなる。

逆に言えば各ユーザーが見たくないような情報を遮断するフィルター機能が働く。その結果、泡(バブル)の中にいるように、自分が見たい知りたい情報しか見えなくなることを言う。

 

以下の日経新聞の記事は、そのユーザーに合った情報をいかに早く精密に提示するか、その競争の実態を伝えている。

 

世界の隅々の情報まで瞬時にアクセスできる時代、SNSで多くの人たちと繋がれる時代にあって、それとは全く逆に、ネットの世界では個々人がどんどん孤立していく。

 

 

松山千春「human」(2004年)は、フィルターバブルとはまた違った大きな意味で、”こんな時代”の中で、取り残され孤立して生きる主人公の独白的な歌詞で作り上げられている。

 

「だって僕はずい分とまえに とり残されちまってる」

 

2004年秋のツアー、二部の1曲目がこれ。歌い終わった後に松山が「いやぁ、申し訳ない。二部の始まりと言うのにこんな歌が1曲目で」(要旨)と言っていたのを覚えている。

 

 

 

こんな時代に君は何を 求め何を捜すの
笑顔の奥に隠したはずの ため息がもれている
引き返す事は出来ない それがそう人生だから

ただくり返される毎日 それを迎え見送る
疲れきった身体を心が 何とか支えている
のがれられず生きながらえる それがそう人生だから

おかしくて おかしくて 悲しくて 悲しくて

一体いつになれば君が 望む世の中になる
その為に君は何が出来る 何をして来たという
悩み迷い悔やみながら それがそう人生だから

もし君がとり残されても 笑ったりはしないよ
だって僕はずい分とまえに とり残されちまってる
おびえる程のものじゃない それがそう人生だから

おかしくて おかしくて 悲しくて 悲しくて

こんな時代に君は何を 求め何を捜すの
こんな時代に君は何を 求め何を捜すの
こんな時代に君は何を

 

 

「狙う広告」1兆円突破へ、属性や行動分析、0.1秒の攻防、乱戦市場、規制圧力も(データの世紀)  9月3日 日本経済新聞(抜粋)


 ネット上で特定の個人を狙う「ターゲティング広告」の国内市場規模が2018年に初めて1兆円を超える見通しとなった。過去に見たサイトや購買履歴を分析し、0・1秒以内に好みや関心に合わせて最適な広告を打つ。「あなた」を特定する技術の開発が進み、狙い撃ちの精度を1万倍に高めた日本独自の手法も登場し始めた。新たな成長産業の膨張は続くが、プライバシー規制の強化という逆風も吹きつつある。


 電通などによると、国内のネット広告市場は18年に1兆4397億円と前年から2割増える見通し。このうち「狙う広告」の比率は初めて全体の8割に達し、1兆1千億円にまで拡大。ネット広告全体では最大の広告媒体である地上波テレビの8割の規模に迫る。
 すでに米国では16年にネット広告費がテレビを上回った。日本でも「数年以内にネットが最大になる可能性は高い」(みずほ銀行の石川真一郎氏)。原動力が「アドテクノロジー」と呼ばれる先端広告技術だ。
 

20社、競りに殺到
 

 スマートフォン(スマホ)やアプリが記録する位置情報から、通勤経路や余暇行動のパターンを解析。検索履歴などと組み合わせて性別や年代、趣味といった人物像を推測し、心に響きそうな広告を打ち出す。心理学や統計学とも融合し、よりピンポイントで狙い撃つ技術の発達が進む。
 8月。東京都中央区在住の男性会社員(40)は悩んでいた。SUBARU(スバル)の小型車「インプレッサ」に長年乗り続けてきたが、今秋に車検が切れる。「買い替え時かな」。ふとスマホで天気予報アプリを立ち上げると、独BMWの多目的スポーツ車(SUV)の広告が目に飛び込んできた。
 アプリは画面の一部が広告枠になっている。起動すると瞬時に広告枠の競売システムが作動。約20社が枠を買い取りたいと手を挙げ、システムは最高額を示した広告案件を選び出した。この間、0・1秒。やり取りはほぼリアルタイムだ。
 BMWの広告は広告ベンチャーのジオロジック(東京・渋谷)が配信した。「DSP」と呼ばれる専門会社の1社で、顧客企業に代わって枠を買い取り広告を届ける。
 「高級住宅地に住む大手企業勤務の40歳代男性。釣り好きで、もうすぐ車検が切れる」。天気予報アプリが記録していた位置情報を活用。外部から購入した車検データと国勢調査を組み合わせ男性の特性を割り出した。「広告を見てから気になって」。男性はBMW車の購入を決めた。
 ジオロジックが狙う広告を始めたのは2年前。どの地域にどんな人が住んでいるか、これまで数キロメートル四方単位でしか分類できなかったが、データ蓄積が進んで数十メートル四方にまで絞り込めるようになった。より生活状況に適した広告を打てるようになり、利用者が実際に広告をクリックする確率も2倍になったという。
 狙う広告が普及したのは08年のリーマン・ショックがきっかけだ。失業した金融工学の技術者が大量転職。株取引の仕組みを応用した高度なアドテクが一気に広がった。
 先行する米国では18年に狙う広告の市場規模が約5兆円と、5年前の10倍になるとの試算もある。対する日本は同3倍。成長は続くが、担い手の「アドテク企業」には2つの大波も忍び寄る。