浜田省吾のアルバムはデビュー当時からある程度までほぼ持っている。
しかし松山千春や長渕剛ほど、歌たちともに継続的にその生き方に注目して来なかっただけに、長年応援されているファンの皆様を思うと軽々には語れない。
それを前提に浜田省吾「悲しみは雪のように」
1981年に発売された時にはほとんどヒットしなかったが、後年(1992年)、テレビドラマとタイアップしてリメイクされ、これがミリオンセラーとなった。
個人的には1981年Ver.のアレンジがいい。
浜田省吾を知らない世代などには、浜田省吾の代名詞と言ってもいい曲かも知れない。
私の中では「路地裏の少年」「片想い」「もうひとつの土曜日」などと並んで、スタンダードナンバーにまでなっているように思う。
これらの歌を作り歌っているのが浜田省吾とは知らずとも、歌自体は知っていると。
「君は怒りの中で 子供の頃を生きてきたね でも時には 誰かを 許すことも覚えて欲しい」
―この歌詞がこの歌の核だといつも思う。
誰かへの怒りに自分の心が占められると、その感情によって自分自身を壊していく。
同じような内容を中島みゆき(「空と君のあいだに」)も、長渕剛(「自分のために」)も歌っている。
その気持ちはよく分かる。でも君自身を守るために、君が君自身を取り戻すためにも「許す」ということが必要だ。
怒り憎む内容や人はどうだっていい。君自身のために「許す」ことが大切なんだ。
でないと君は閉ざした心のまま、君にたくさんの愛情を注いでくれる人たちに気づかず通り過ぎてしまうだろう。
結果的に大切な人たちを遠ざけ、君一人だけの悲しみがどんどん積もって行ってしまう。
君は決してひとりではない。
感受性豊かな浜田省吾の優しさ溢れる名曲だと、今日車中で聴いていて改めて思った。
君の肩に悲しみが
雪のように積もる夜には
心の底から 誰かを
愛することが出来るはず
孤独で 君のからっぽの
そのグラスを満たさないで
※誰もが 泣いてる (I'm crying for you)
涙を人には見せずに (You're crying for him)
誰もが 愛する人の前を (He's crying for her)
気付かずに通り過ぎてく (She's crying for me)※
君は怒りの中で
子供の頃を生きてきたね
でも時には 誰かを
許すことも覚えて欲しい
泣いてもいい 恥ることなく
俺も独り 泣いたよ
※Repeat
君の幻想 時の中で
壊れるまで 抱きしめるがいい
※Repeat
悲しみが雪のように つもる夜に…
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ウィキペディアによると、この歌詞の世界観は、浜田省吾が敬愛する詩人・吉野弘の「雪の日に」をモチーフにしているらしい。以下「雪の日に」の最後の箇所抜粋。
雪がはげしくふりつづける
雪はおのれをどうしたら
欺かないで生きられるだろう
それがもはや
みずからの手に負えなくなってしまったかのように
雪ははげしくふりつづける
雪の上に雪が
その上から雪が
たとえようのない重さで
音もなくかさなっていく
かさねられていく
かさなってゆくかさねられてゆく
吉野弘さんの詩集を私も一冊だけ持っている。とくに好きな詩は「祝婚歌」。
以下これもその詩の最後の部分抜粋。
健康で風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そしてなぜ 胸が熱くなるのか
黙っていてもふたりには
わかるのであってほしい