嵐の櫻井翔さんと生命保険会社アフラックのCMで共演した山下弘子さんが亡くなっていたことを、山下さんの夫が公式サイトで報告した(3月25日)。享年25。

 

4月2日付の日本経済新聞がコラム(以下全文)で哀悼の念を表明していた。

 

松山千春の「この世で君が一番好き」のフレーズが浮かぶ。

 

(「この世で君が一番好き」を歌う松山千春/横浜アリーナ)

 

「すべてが愛しい 昨日今日もまだ見ぬ日も

何より君への愛 永遠の生命を与え

 

こんなに生きていたいなんて

こんなに生きていたいなんて」

 

この歌は松山千春が、舌ガンで逝去されたお姉様のことを歌っている。

全編聴けばラブソングのようだが、お姉様のことを歌ったと松山本人がステージでよく語る。

 

お姉様の闘病の模様を語ったあと、この歌を歌う。

「父さん」「あなたが僕を捜す時」「生命」と並び、松山が最愛の家族を思い歌っている。

 

「すべてが愛しい 昨日今日もまだ見ぬ日も」

本当にそうだ。余命を伝えられた本人、家族にとってそこからの日々はただ愛おしく尊い。

現在はもちろん、過去も未来も時が止まって欲しいと思う。

 

「遠い日の思い出 まだ知らぬ明日も  みなすべて 私の大切な人生  繰り返す季節に愛されていたくて」―松山千春「星空」のワンフレーズ。

かけがえのない私の人生、私の家族との人生。いつまでもいつまでも巡り来る季節に愛されていたい。

 

生きていたい。生きたい。

 

もちろん面識はない。でも山下弘子さんに心から哀悼の気持ちを捧げます。

そして今病気と闘われている皆さんの平癒と寛解を心から祈ります。

 

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二十歳が人生で最も美しい時とは言わせない(春秋) 2018/04/02 日本経済新聞 
 二十歳が人生で最も美しい時とは言わせない。ポール・ニザン「アデン、アラビア」の有名な書き出しは、こう続く。「この世界のなかで自分の場所を知るのはキツイものだ」(小野正嗣訳)。何者でもない自分が社会で何をなせるのか。若い希望は不安と表裏一体だ。
▼大学生だった山下弘子さんが肝臓がんと診断されたのは19歳の時だ。病巣は大きく余命半年と告げられる。その夜は泣きながら眠ったものの、翌朝には落ち込む両親らに明るく「おはよう!」とあいさつした。家族の雰囲気を自分が変えなきゃ。そう考えたからだと、手記「人生の目覚まし時計が鳴ったとき」で振り返る。
▼以来5年半、再発と手術を繰り返しつつ海外を旅し富士山にも登り、昨年結婚。その軌跡を講演やネットで広く伝え続け、先月25日に25年の生涯を閉じた。生前に一度だけお会いしたことがあるが、周りの皆を明るくさせる笑顔が心に残った。前向きな姿に励まされたからと、面識のないがん経験者も通夜に訪れたという。
▼きょう社会人として巣立つ若者が大勢いる。不安や惑いも大きいだろう。学生時代が一番楽しかったなあ。そう嘆く大人になるか、自らの手と足で自分の場所をしっかり築き上げるか。「人生は短くても長くても一度きり。泣いても笑っても一度きり。一瞬たりとも後悔なく生きたい」。山下さんの著書の一節を贈りたい。