2月18日(日)、久しぶりに仕事が16:00頃終わった。

足早に帰宅し、酒を飲みながらまとめておいた新聞記事のクリップや本(今は「西郷隆盛」)を読むこの時間が一番楽しいし、ホッとする。

 

同じテーブルでは、小さい頃からキッチンスタディの二人の子どもが期末試験の勉強に勤しんでいる。

 

もう少し本を読み進めようと思ったが、先日来車の中で超久しぶりに聴いていたASKA(飛鳥涼)のアルバム「SCENEⅡ」の「けれど空は青 〜close friend〜」「都会の空」「君が愛を語れ」がずっと私の中で響いている。ついつい口ずさんでいる。

 

1991年6月に発売されたASKA(飛鳥涼)の2枚目のオリジナルアルバム。このアルバムのフラッグシップ的な「はじまりはいつも雨」のヒット、そしてなんといっても同年CHAGE&ASKAのシングル「SAY YES」の爆発的ヒットもあって、最終的にミリオンセラーを記録した。

 

今でも素晴らしいアルバムだと思う。

 

その中でも上の3曲、とくに「都会の空」は発売当時から好きで、アルバムとともに何十回聴いただろう。ただ、何度聞いても、失恋した女性の歌なのか、夢に破れた一人の主人公を歌ったのか、把握しきれない。

 

「憧れ」を「夢」と置き換えていいのか。そのうえで、綺麗なメロディとともに心に迫ってくる曲、今聴くと、挫折を越えて夢を目指す一人の主人公が浮かぶ。

 

CHAGE&ASKAの公式WEB SITEには以下のライナーノーツが記載されているが、曲の内容などへのASKAのコメントではない。

'89に高橋真梨子さんに提供したもの。でも詞はずっと以前にあって、昔出した詩集の『オンリーロンリー』に収められているんです。曲もかなり古いものだったから、メロディなんかは当時の色がよく出てるけど、今歌ったらこんなになってしまいましたって感じかな。  アレンジの十川に曲を聴かせたとき、全然古い感じがしません。これは僕の中でこういうふうにしてみたいっていう感覚があるので、まかせてくださいと言うもんだから。それじゃ、ということで100%完全にまかせました。これについては、一言もアレンジに横ヤリを入れてません(笑)。(ASKA) -1991年Music City8月号より-

「都会の空」 (作詞・作曲/飛鳥涼)

 

人は憧れの矢を いつしか背中に忍ばせて
遠い夢に狙い定めて  放つことを 覚えたという

高い高い空が見えますか この空は何処まで
ある日都会で 一人の女が 行き止まりの 空を見た

こんなもんだね こんなもんだねと 微笑む顔を
両手に隠す 両手に隠す

もうこんな想いは ごめんだと 噂話の横を 通りぬけた

だけど  やさしい 人の声には
淋しい心が  耳を すましてしまう

人の心と 都会の空を  信じるおひとよし
雨に打たれて 落ちた化粧で まだ 人を待つつもり

誰が名付けたのか 花言  信じる 迷い人
装い疲れ辿り着いたら  散る花びらもない

こんなもんだね こんなもんだね  微笑む顔を
両手に隠す 両手に隠す

都会の空を 見上げれば  何もかもが ただのひとりよがり
だけど 甘い夢に惑わされて 他愛もない憧れが
また湧き上がる

 

 

彼が作る詩は、ぽっと心を掴まれるような見事な表現、比喩が多いように感じている。

 

「君の愛は信じてる 天気予報くらいにね

目隠しでも 君のキスはわかる」  (「天気予報の恋人」)

 

「もう君を忘れたいと思うよ 今は

君を愛してたくらいに 愛したい人がいる
彼女は僕の中の 君までも愛せる人

いつか君に告げたよりも 聞かせたい言葉がある」  (「明け方の君」)

 

「ためらいを捨てて ビルに上ろう 空にかけた絵を 胸に持ち込んで 

昨夜見た夢の中 はためかせてみようか
君は見たか ひとつの鼓動を分け合いながら

心の場所を知らせる 君だけのBIG TREE」  (「TREE」) 

 

ひたすら自分の気持ちをストレートに吐き出すのでもなく、断片的に抽象的な言葉を置いていくのでもない。それぞれの曲に彼がイメージする世界観や風景があって、言葉を紡ぎ出し絞り出すようにひとつのストーリーに仕上げていく。

そうして生まれ出た曲だから、不思議にも、一人の人がその歌を聴く年齢、立場なりに違ったメッセージを伝えてくる。人それぞれに、その人の状況それぞれに受け止め方が違って入ってくる。

うまく表現できないが、そういった魅力、魔力ある歌詞の世界だと思う。

とは言え、今も現役で歌っていて、そのシンガーソングライターが作る曲やステージに、伝わらないとしても一ファンながらあれこれ注文を付けたり、喜んだりできるような、同時代に生きている幸せな感覚は、私の中ではもう彼にはない。

 

「確かに昔はそうだった」―最後はそんな言葉で終わってしまうのが残念だ。