「ジャパネットたかた」の創業者であり前社長の高田明氏は

「ひとつの商品には開発した人の思い、強い動機がある」(だからこそ)「すべての商品に伝える価値はある」     (  )は筆者追記。

と語っている。

 

 つい先日(11月10日)発売された「90秒にかけた男」 (日経プレミアシリーズ) <高田 明 (著),‎ 木ノ内 敏久 (聞き手)>で、氏が熱い思いを語っている。また日経新聞のWEB上にも掲載されている。

 とくに私の中に止まった箇所は、冒頭の氏の言葉に続く「商品の見えない価値を顕在化させる例」として語ったことである。

 

 いわく―

 『会議やインタビューで使う電子機器にボイスレコーダーがあります。私は通販番組で「おじいさんやお母さんこそ使うべきですよ」と視聴者にいつも訴えていました。なぜか。歳を重ねれば誰でも物忘れが多くなりますよね。そんな時に何か伝えなければならないことや、ふと思ったことをメモを取る代わりにボイスレコーダーに吹き込んでおけば、物忘れの心配は無くなりますよね。
 お母さんだったら、仕事へ行く前に、子どもさんが学校から帰ったら、「お母さん6時ごろに帰るからね、おやつが冷蔵庫に入っているよ」とボイスレコーダーに肉声を残しておけば、お子様はその声を聴いて安心しますよね』

 言われてみれば「なるほど!」と思うが、まさに商品の見えない価値の部分だ。単なる機器の説明の向こうに、人間の温かさと情景が伝わる。

 さらに―

『ビデオカメラを宣伝する時にはよく次のように言っていました。「お母さん、子供の運動会に行くときには子供だけの映像を残すのではなく、お父さんやお母さんや家族の方も一緒に残しましょうね」。

なぜならば子供が大きくなった時、小さい時の自分を見るだけでは物足りないものです。20年前の若きころのお父さん、お母さんや、亡くなった祖父や祖母が元気でいる映像を見たら、めちゃくちゃ感動するものです。だから一緒に家族を入れてビデオを撮るべきだとずっと通販番組で言い続けました』

 確かにそのとおりだ。子どもたちの映像と一緒に、本当に時折写っている15年前の家内と私の姿を見るだけでも、不思議な気持ちになるし、録画しておいてよかったと思った経験がある。こういう説明は明らかに購入動機となる。
 この商品の価値発見のくだりは次のようにまとめる。

 「商品というのは体験的に腑(ふ)に落ちるシチュエーションを頭にまず思い描いて、商品の先にある本当の役割と価値を、使用者目線で伝えて行く事が大切だと思っています。それは結果的に開発者の真の想いを伝える事にもなるでしょう」

 なるほど、商品を作る時に、売れなくてよいとか人のためにならなくてよい、と思って作る人はいないだろう。使う人の目線でその商品の価値を考えていくと、おのずと制作者の思いに繋がっていく。それが「腑に落ちる」ことで、「伝える価値がある」ものだと思う。
 そしてまとめる。

 『こうしたことは、私だからできるということでは決してありません。「伝える」ために「伝わる」ためにどうしたら良いだろうと、日夜考え続けて精進し続ければ、変化対応、変化創造の直感力は誰にでも備わってくるものだと信じています。私は商品の魅力を引き出して一人でも多くの人にモノを使って人生を豊かに生きてもらいたいと思って、テレビカメラの前に立ち続けました』

 買って使ってくださるお客様への温かい心が伝わる。だからこそ、その結果として商品が売れるのである。

 

 私の仕事も、突き詰めて言えば「お客さん商売」である。これまでも私発の提案がいくつか採用され、その制度のメリットに浴し喜ばれている方々を見て来た。あの瞬間ほど嬉しいことはない。その喜びが、自分の内面を拡大してくれているようでならない。

 高田氏のマインドに学び、さらに精進していきたい。