【歿後50年 山本周五郎展】
2017年9月30日〜11月26日 県立神奈川近代文学館
私の一方的な誇りだが、山本周五郎は私と同郷の山梨県出身。これまで約30年間でほぼ全作品読了している。その中でも「ながい坂」は私の座右の書だ。
折りしも今「長い坂」、3回目を読んでいる。
「読者からの評価さえあればそれでいい」―その姿勢のままに虐げられた人々に光を当て、女性を守り、そして無名の庶民の生活と喜怒哀楽を書き続けた。
「小説 日本婦道記」が直木賞に推されても、その姿勢のままにそれを蹴った。
本名は清水三十六(さとむ)。山本周五郎という名前はペンネームで、丁稚奉公にきた清水少年の文才を見抜き、生涯支援し続けた「山本周五郎質店」店主、つまり周五郎にしてみれば人生の恩師の名前をそのまま使っている。
「山本周五郎」の名前で作品を出し続けることこそが、周五郎の恩師への恩返しだった。
そういう周五郎を世間や文壇はへそ曲がりと呼んだが、本人は意に介せず、読者第一の姿勢を貫き通した。
今、周五郎が直木賞を辞退したとき、白眼視した文壇の大御所たちの作品がどれだけ人々に読まれているのだろうか。へそ曲がりと呼んだ人たちは、その後どれだけの人々の人生を応援してきたのだろうか。
今も人々から愛され読まれ続けている周五郎作品との差は、時が経てば経つほど鮮明だ。
孤高の作家山本周五郎が遺し続けた「人間愛」あふれる作品たちは、今も多くの人々の人生に温かな眼差しを注ぎ、優しく時に激しく応援し続けている。