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『ネガティブ・ケイパビリティ
   答えの出ない事態に耐える力』
帚木 蓬生(ははきぎ ほうせい)著
朝日新聞出版/2017年4月

この言葉の意味は
「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」

あるいは

「性急に証明や理由を求めず、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいることができる能力」
(同書)

    歳を重ねてから起こる問題や課題はすぐに結論を出せないことが多い。解決や改善に数年はかかることがよくある。
    左遷や裏切り、あるいは家族や自身の闘病など、今日悩んだからと言って、明日明後日結論が出るものではない。そうした状況に置かれた時、必要になるのがこのネガティブ・ケイパビリティという、一つの能力、パワーだ。

   「解決しなくても、訳がわからなくても、持ちこたえていく。消極的(ネガティブ)に見えても、実際には、この人生態度には大きなパワーが秘められています。
   どうにもならないようにみえる問題も、持ちこたえていくうちに、落ち着くところに落ち着き、解決していく。人間には底知れぬ知恵が備わっていますから、持ちこたえていれば、いつかそんな日が来ます」(同書)

    すぐにはどうにもならない問題の中にあって、無理やり自分の気持ちを折りたたんだり、意義付けても、心が傷ついているからついてこない。そしてまたもがき苦しむ。
   その時はジタバタしてもどうにもならない。私がかつての苦境の中で感じた言葉で言えば「過ごす」こと。なんとも宙ぶらりんの状態を、温泉につかつるような気持ちでゆったり過ごす。
    それはホールディング(ドナルド・ウィニコット)=抱える、という概念や、寛容という概念にも通じるのだと、この本から学んだ。

    どうにも解決できない問題を、宙ぶらりんのまま、何とか耐え続けていく。そのときに寛容という力が蓄えられていく。

   やがてまた心が復活し、元気になれば、これまで以上に明るく強く歩き出すことができる。

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