今日はとても暖かく、まさに春そのもの。こうした日は今から38年前の3月末、卵巣がんで逝去した筆者の母を思い出す。あの時ベッドの脇で母の逝去を見守った今は亡き父も。▶筆者が学生時代から愛読している文豪・山本周五郎氏の作品の中に名著「さぶ」がある。氏はその中で綴った。自分に心を向けてくれる人たちに気づき、感謝する生き方を説いたくだりで―「お前が気づくか気づかないかに関係なく、風はいつも四季折々の薫りを運び続けているものだ」(要旨)―その人たちの気持ちに気づくかどうかは、お前自身の心の問題だ、と。▶自宅周辺を散歩しながらふと口ずさむ松山千春さんの「春は来る」(2015年4月発表のアルバム『伝えなけりゃ』収録)。すべてのものの喜びが、花が弾け咲くように開く春。希望の象徴と言える「春」の訪れを歌う。筆者としては時代をこえた名曲だと思っている。▶凍てつく分厚い大地、吹きすさぶ北風、降り積もる雪、そうした冬の暗く長く厚い壁を打ち破るかのように、力強く春が芽生える。▶人生もまた。冬は必ず春となることを信じて、今の苦境をじっと堪え、時が来るのを待つ。今この状況には必ず意味がある。闘病している方に、病状はどうであろうと心を込めて言葉を贈る。「春になったら必ずよくなりますよ」。「冬は必ず春となる」―短い言葉ながら人生の本質を捉えた言葉である。
(虹)2026.02.23-



