ステージと舞台手話通訳の写真(カテコ撮影OK)
 
『SIX』日本キャスト版、舞台手話通訳・字幕付き公演を観てきました!!
 
ヘンリー八世の6人の妃たちが、「誰が一番不幸だったか」を競い合う…と思いきや、自分たちの歴史を書き換え、〝自分〟の物語を生きることを決意する物語。
観客も勇気づけられるような、最高にエネルギッシュな作品でした。
 
また、楽曲や歌詞も素晴らしく、会場のテンションは最高潮!「あと5分だけ…」とカウントダウンが始まった瞬間、心の中で「まだ終わらないでー!!」と絶叫してしまいました。
 
友人や知り合いも来ていて、会場のあちこちで手話でおしゃべり。
また、公演後は一緒に観た方々と、手話で感想を語り合い、本当に素晴らしい時間を過ごすことが出来ました。楽しかった…!!!
 
メインキャストの写真が貼られた看板
 

アクセシビリティについて👑

 

この公演では、舞台手話通訳字幕が提供されました。

さらに、みんなで一緒に楽しむために、こんな取り組みも行われていました。

  • 舞台手話通訳・字幕付き公演であることを劇場の複数個所に掲示
  • 劇場内に手話通訳を配置
  • 字幕受付で字幕機の使用方法を視覚的に説明するツールを用意
字幕機貸出を案内する看板
 

手話通訳席は比較的多く、客席前方上手のエリアでした。

ざっと50席ほどでしょうか。

視覚的に情報を得やすい距離で、手話通訳、演者の口元、表情などから、情報を得ることが出来ました。

座席表。右上に丸。
聞こえない私は、音の情報の代わりに、目から様々な情報を得ています。そのため、「視覚的に情報が得られる席」は「必須」だと思っています!
 

観客は、主にろう者と、手話ができる難聴者でした。著名な手話関係者の方々もいらしており、「手話をもっと広めたい!」という熱意をひしひしと感じました。

 

上演時間と舞台手話通訳について書かれた看板

 

 舞台手話通訳 実現までの道のり 👏

 

今回の舞台手話通訳が実現した背景には、舞台手話通訳者と舞台制作者の方の、ご尽力がありました。彼らが梅田芸術劇場に直接掛け合った結果、実現に至ったそうです。

 

作品上演の告知と同時に、舞台手話通訳がつくことが発表されたことで、「えっ、舞台手話通訳がつくの?!すごい!」と大きな話題に。作品の盛り上がりをさらに後押しする形になりました。

 

上演の発表と同時に、アクセシビリティの告知もある、

これは非常に大事なことです。

たまにチケットの販売開始後に字幕が付くことを告知する作品もありますが、リーチ力が足りず、必要な人に情報が届かないことも…。

 

 

さて、公演情報が発表されないと要望を出せないのが、観客のつらいところ。

私は、日本語で何と歌っているのか知りたかったので、SNSで声をあげ、粘り強く要望を出した結果、字幕もつくことが決定しました。

 

この時点で手話通訳席のチケットは、ほぼ売り切れ。「字幕があるなら私も観たかった」という声が、手話を使わない難聴者の方々から上がっていました。

 

 

 手話通訳&字幕、使ってみた感想は?

お待たせしました!実際に手話通訳席に座って、どんな風に舞台を観ていたか、書いていきたいと思います。

舞台手話通訳の写真

 

今回、手話通訳の立ち位置は、舞台の袖。

舞台端から2メートルほど離れた場所でした。

通訳衣装は、王妃の侍女という雰囲気。アイメイク、ネイルなども作品にぴったりで、とても素敵でした。全編通して一人で通訳を行っています。

 

手話通訳を見ることで、台詞にこめられた感情も、とても良く伝わってきました。

また、音楽のリズムに合わせて動く時もあって、リズムが分かりやすかったです(演者に負けないカッコイイ動き!)


字幕は手元のタブレット端末に表示され、タブレットと舞台を交互に見る方式です。大声で話す所はフォントを大きくする、演出上重要な音は音情報の説明を入れるなど、音が無くても内容が伝わるように、様々な工夫がなされていました。

さらに、席が演者に近いため視覚情報が得やすく、台詞にこめられた感情が、演者から視覚的に伝わってきたのも凄く良かったです。

また、端末にはアームが付いていて席に固定でき、手で字幕機を持たなくても良いようになっていました。

 

 

手話や字幕を「情報保障」というのですが、

私は舞台に情報保障が2つある場合、場面に合わせてどちらか1つを利用すると決めています。字幕も手話も演者も全て見ると、目が疲れてしまいますからねー。

 

ただ、私の席は舞台に近い、凄くいいお席だったのですが、手話通訳の位置が舞台から遠かったという事情もありまして……

殆どの場面で字幕を見て、たまに手話通訳を見ていました。

 

そう、舞台を観ながら袖にいる手話通訳を追うというのは、なかなか大変なのです。

演者が左側で熱唱しているのに、視線は右側の手話通訳へ…というジレンマ、想像できますでしょうか?人間の目はカメラの広角レンズじゃないんですよ!!笑

 

字幕は「聴覚障害者向け」という位置づけで、タブレット端末を利用した限定的な対応でしたが、もう少し広い層に向けてもいいのでは?と思いました。

字幕も舞台上にあった方が見やすいし、自分は障害者だとは思っていないけれど聞こえづらさを感じている人、正確な台詞、歌詞が知りたい人もいます。

聴覚障害のある人が使っている字幕を、より多くの人が利用できるようになれば、アクセシビリティの向上にもつながるはず!

 

今回、字幕も手話も両方あったというのは、本当に大きな一歩で、

どちらもあって良かったです。

 

 日本の商業演劇、アクセシビリティの未来は? 🎭

 

近年、日本の大手商業演劇でもアクセシビリティが向上しており、「SIX」のような大きな舞台にも少しずつ舞台手話通訳や字幕が付くようになっています。

しかしながら、「字幕」か「手話」のどちらか一方の対応になることも多いです。本当は、両方とも実施するのが理想の形なのではないでしょうか?

「SIX」の場合は、アーツカウンシル東京の助成金も後押しし、手話と字幕、両方の対応が実現しました。

 

 

ミュージカルファンの私が個人的に感動したのは、これを真っ先に実現したのが東宝でも宝塚でもなく、梅田芸術劇場だったこと!

 

実は梅田芸術劇場の字幕対応は、これが初めてではありません。
2017年に「ローマの休日」で字幕対応を実現しているのです。

(知ってました?私は後から知りました…)

 

📌 参考記事 → 梅田芸術劇場「ローマの休日」初の字幕サポート実施しました!-NPO法人シアター・アクセシビリティ・ネットワーク(TA-net)

 

 

「ローマの休日」で字幕対応に携わられたTA-netは、2018年頃から舞台手話通訳講座の開講や、舞台に手話通訳を付ける取り組みを実施。そこで経験を積まれた舞台手話通訳者の田中結夏さんが、今回「SIX」の舞台に立たれています。

 

文字情報についても沢山の観客が要望を出し続け、2021年頃から梅田芸術劇場で台本タブレット対応を実施するようになりました。そして今回、2度目の字幕対応が実現しました。

アクセシビリティの向上は、”積み重ね”ということを改めて実感しています。

 

「ローマの休日」から約8年。

社会は確実に変わってきています。

今回の舞台手話通訳と字幕の取り組みが、次に続くことを心から願っています。

 

アクセシビリティ向上が当たり前になる未来へ!
そして、もっと多くの人が素晴らしい舞台芸術を楽しめる世の中になりますように✨

 

 

👑NEWS!

2月14日(金) 午前7時45分~、NHKのおはよう日本(関東甲信越)で、舞台手話通訳の模様が放送されるそうです。

NHKプラスでの配信もあり。ぜひチェックしてね!