以前、新国立劇場が補聴システムのモニター会を実施したことをブログに書きましたが、今回はなんと東京芸術劇場が新しい補聴システムの体験会を開催!!ということで行ってきました。
◆体験会の案内
聴覚支援システム「モバイルコネクト」機材体験会の実施について (geigeki.jp)
◆新国立劇場のモニター会レポート
SNSへの投稿OKということでしたので、どんな感じだったか簡単にレポートしていきたいと思います!なお、聞こえ方は人によって異なります。そのためどのように聞こえたかは個人の感想となります。
補聴システムとは
補聴システム(聴覚支援システム)とは、その場の音を聞きとりやすくする設備のことで、劇場や講演会場などに設置されていることが多いです。
今回は「モバイルコネクト」という名前の補聴システムを体験しました。(他にも、「ヒアリングループ」や「赤外線システム」など、様々な補聴システムがあります)
補聴システムは、「Tコイル」という機能がついている補聴器や人工内耳などで利用することができます。ちなみに私は補聴器ユーザーで両耳に補聴器をつけています。
今回の体験会は聴者の方も参加されていて、イヤホンでも試聴できたそう。補聴器をつけていない人も利用できるケースもあります
ちなみに現在、東京芸術劇場には補聴システムとしてヒアリングループ(磁気ループ)があります。でも、もっと良いシステムがあれば導入しようという心意気が素晴らしいですね!!
モバイルコネクト体験記
当日はオペラのゲネを鑑賞しました。
歌や台詞は日本語で、字幕はありません。
劇場では、首にループのようなものをかけ、このループに自分のスマートフォンを繋ぎました。
また、自分のスマホには事前に専用アプリをダウンロードしておきます。
アプリを立ち上げて、劇場が用意したQRコードを読み取り、劇場内の専用Wi-Fiに接続すると…おお!音がハキハキ、クリアに聞こえる!!!
とても美しく表現力豊かな歌声で、人間ってこんなに凄い歌声で歌うことが出来るんだと感動…!久しぶりにオペラを堪能しました。
今までにない機能①
なんとこのシステムは、スマホで音を調整できるのです!!
音の大小や、高い音を聞きやすくするなどの調整ができます。私は標準音ではあまりよく聞き取れませんでしたが、調整するとかなり聞き取りやすくなりました。
ただ、これを使ったからと言って、聴者と同じように聞き取れるわけではありません。
私の聴力(重度難聴)では、台詞の内容は途切れ途切れに把握できる程度です。また、歌は何を歌っているのか全く分かりません。やっぱり字幕も必要だと思いました。
今までにない機能②
そうそう、モバイルコネクトは補聴器のTコイルだけでなく、補聴器のBluetooth機能も使えるというのも大きなポイントです!!
これは個人的にも、本当に待ち望んでいた機能でした。
ただし、Bluetoothの場合は少し音が遅れて聞こえます。それが個人的に許容できるかどうか、という所になってくるかと思います。
モバイルコネクトの感想
今まで様々な劇場で補聴システムを使ってきましたが、そのクオリティはピンキリです。
例えば、ある劇場の補聴システムの場合は赤外線システムでしたが、雑音があったり、拍手をしたら(手が邪魔で)音が受信できなくなる、なんてことも。。
耳が聞こえにくいからといって、音の質が悪くても問題がないわけではありません。聞こえにくいからこそ、質の良い音が必要になるのです。
今回体験したモバイルコネクトは、雑音などは一切なく、音も割と綺麗だと感じましたし、音の調整ができるのも良いと思いました。
演劇は台詞が聞き取れないので字幕との併用が必要ですが、音の情報がより多く入ることで作品の解像度が上がりそう。
台詞のないバレエや演奏会は、補聴システムがあると、聞こえにくくとも楽しめるのではないでしょうか。
体験会では聴者の方もイヤホンで試していたので、補聴器ユーザーではないが少し聞こえにくくなった方も利用できるかもしれません。
ただ、モバイルコネクトは全てにおいて完璧!というわけではなく、、
現在劇場にあるヒアリングループは何も用意しなくても補聴器をつけて設置エリアにいれば使えるのに対して、モバイルコネクトは自分のスマホを使うので、スマホをしっかり充電しておく必要があります。
私は3年ほど前に購入したiPhoneを使っており、そこそこバッテリーが劣化しています。今回、1時間のオペラでバッテリーは20%減りました。2時間の演劇ならその倍の40%減???ひぃぃ、、。ただ、今回は鑑賞中に設定を触ったので減りが早かったかもしれません。
なおiPhoneを充電しながら鑑賞することはできません。鑑賞の前後で充電できるモバイルバッテリーは必須だと思います。
また、iPhoneにはイヤホンジャックがないので、コネクターを自分で用意する必要がありました。
さらに首にループをかけるというのも、微妙に抵抗感があります。(←潔癖?)できれば補聴器、イヤホンひとつで聞きたい気持ちはありますね。
当然ながら、音の聞こえ方によって合う・合わないはありますし、メリット、デメリットもありますが、アクセシビリティ向上の「選択肢」の一つとして、補聴システムを利用できる場所が増えてほしいと思います。
補聴器業界と条例、今後の課題
現在発売されている補聴器の傾向として、Bluetoothつきの補聴器が増え、Tコイルつきの補聴器は少なくなっています。
私は劇場で補聴システムを使いたいので、購入するときにTコイル付きの補聴器を探しましたが、あまり選択の余地がありませんでした。また、私が利用している補聴器屋さんからは「いまTコイル機能が欲しいという客はほとんど居ない」と言われました。ニーズが少なくなってきているのでしょうか。。
私はスターキーのジェネシスという補聴器を使っています。Bluetooth、Tコイル有・充電が2日は持ちます。
補聴システムでBluetoothも遅延なく使えるようになると、もっと沢山の補聴器ユーザーが利用しやすくなるのではないかと思います。
今後、東京で新築・改築される劇場には補聴システムは必ず入るようになってくると思います。
なぜかというと東京都の福祉のまちづくり条例に、ある程度の規模の劇場には補聴システムを設置することが定められていて、劇場を建てる際には自治体に報告して補聴システムがあるかどうかも含め、審査を受けるようになっているからです。
最近できた劇場で私が知っている範囲では、池袋のブリリアホール、新宿のTHEATER MILANO-Za(シアターミラノ座)、改築だと渋谷のパルコ劇場などに補聴システムが入ってます。東京以外だと、宝塚大劇場、御園座などにもあります。
しかし、ブリリアホールやミラノ座などは貸館のため、主催者に補聴システムを利用できるように働きかける必要があります。
さらに前述の通り、設備はあっても音質が悪いケースもあったりするので質の担保が課題です。
その点でも導入前に体験会を実施して、利用者の反応を聞くというのは、素晴らしい取り組みですね。