2024年4月1日から、改正障害者差別解消法によって事業者も「合理的配慮」が義務になりました。

 

このブログでよく取り上げている「劇団」や「劇場」も、事業者としてこの法律の対象になります。ちなみに公立劇場なども含む行政機関は既に義務化済みです。

 

 

合理的配慮」とはなんでしょうか?

 

それは、障害のある人から

「社会的なバリアを取り除いてほしい」旨の意思の表明があった場合に 

過重な負担にならない範囲で、

社会的なバリアを取り除くために必要かつ合理的な配慮を講ずること。

 

 

例えば、私が「セリフが聞こえないので字幕をつけて欲しい」と劇団にお伝えしたら、

劇団は私と建設的に対話して、バリアを解消するために、どう対応するか検討しなければなりません。

 

 

法律によって、障害ある人がバリアを解消してほしいと訴えたとき、事業者はそれをスルーすることはできなくなりました。

訴えが建設的対話を通してきちんと検討し、何らかの対応がなされるべきことだと、法的に認められるようになったその意義はとても大きいです。

 

 

「えっ、スルーされるの?」って思いましたか?

 

 

はい、めちゃくちゃスルーされます!

 

友人知人からもよく、要望を送っても連絡もないという話を聞きます。既にチケットも買っているのにスルーされたりして本当に困るんですけどね。

どうやら客扱いすらされてない模様。。

 

 

返信があっても、

「貴重なご意見ありがとうございました」

だけ書かれていることもしょっちゅうです。

 

 

実は東京都では条例によって、数年前から事業者も合理的配慮が義務になっています。東京都が運営する相談窓口もあり、事業者に東京都から連絡することもできます。

 

そのため、最初は対応を断られたりスルーされても、この条例を武器に対応を一歩進めていただいたことが何度かあります。

 

 

合理的配慮の実現のために必要なのは「建設的な対話」。

双方が話し合って調整することです。

 

ただ…

 

いまのところ、対話をする障害当事者側の負担は本当に大きいです。

 

 

なぜならマジョリティ(事業者)の方が立場が強いから。

 

事業者側は、障害者と建設的な対話をする経験がほとんどありません。

スルーするか断るだけという非建設的な対応を繰り返してきました。

 

にもかかわらず、障害ある当事者、マイノリティという弱い立場の側が、強い側を動かせるような話をしていかなければなりません。

 

 

私はいつも対話をしていて思うのは、

腰まで埋まるような泥の中で、重いお地蔵様を動かそうとしているような状況だなぁと思っています。

 

まずお地蔵様の所に行くまでが大変。

泥の中を必死に進んで、やっと辿り着いたお地蔵様。

めちゃくちゃ重いんだ、これが。

 

 

しかも対話の中でお地蔵様からこんな言葉を投げかけられます。

 

「鑑賞サポートは周りの迷惑になるのでできせん」

「チケットは払い戻します」

 

これを聞いた時はしんどかったな…。

 

事業者と対話を重ねて病んでしまった人もいると聞きます。

 

 

企業側の人々が法律に対応するためには、社会の中にある障害について、もっと理解を深めていくことが必要です。。

 

 

また、当事者も個人で対話を続けるのは辛いと感じたら自分を守ること。相談窓口に頼るのも一つの方法です。

 

東京都の相談窓口

 

つなぐ窓口

 

 

ちなみにいま、字幕に対応している舞台関係者たちは口を揃えてこんなことを言っています。

 

「本来こういったこと(字幕等のアクセシビリティ)は国公立の劇場が自主的に取り組むべきで、次に大手の興行会社に取り組んでほしい。」

引用)【100の回路】公立劇場として能楽のバリアフリーに取り組む横浜能楽堂の取り組み | THEATRE for ALL

 

これはインタビュー記事の発言ですが、似たような話をあちこちで聞きます。

私たちみたいな小さいところが頑張っているのに、なぜ大手は何もやらないの、と。

 

 私も、字幕対応すれば会社が潰れるなら別だけど

そうでもないなら、公共の劇場と大手主催者ぐらいはしっかり対応しようよ、と思ってます。

 

要望があってから検討するのではなく、最初から検討されるべき。特に大手企業が字幕は過重な負担だとか言っていたら社会は何も変わりません。

 

 

電車やテレビで広告を流し、一流芸能人を起用し、銀座の一等地にポスターが貼られているような作品が数十万円の字幕に対応できないとか、大丈夫?

 

もし本当に字幕対応で企業が潰れるなら、企業からきちんと声をあげていき、国が助成をする必要があると思います。

 

現在、バリアフリー法という法律によって、劇場には車いすスペース設置 他のバリアフリー化が義務付けられています。

(場所が選べない、快適性などの問題はまだありますが)

 

同様に、字幕も合理的配慮を要望してから検討されるのではなく、最初からつくようになることが理想の形です。

 

 

 

リーフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます!」(内閣府)

 

 

◆ライブ配信の鑑賞サポート開始

 

◆字幕・手話付き動画

 

◆東京芸術劇場『巡回公演における鑑賞サポートの波及に向けた検証』報告書