きこえない俳優が出演する舞台で、
きこえない観客向けの観賞サポートが全くない、ということがある。
ちなみに、きこえない俳優は手話で話し、他の俳優は声で話す。
舞台に誘ってくれた友人曰く、手話が分からない観客向けに、手話の意味を音声で会場内に流しているそうだ。
聞こえない俳優は一人だけなので、音声の情報の方が圧倒的に多い。
しかし、音声が聞こえない観客にはサポートはない。
友人曰く、過去に台本も断られたことがある、とのことだった。
「サポートはないから原作を買って読んで」と言われ、チケットに加えて本まで買って読まないといけないの?と友人は大変モヤモヤしていた。
私もモヤモヤした。
本を買う手間に加えて、読んだとしても役者が何を言っているか全くわからないからだ。
これでは作品の魅力は伝わらない。
要望を出すことはたやすいが、、
こういう劇団に対して観客がサポートの要望を出すと、きこえない俳優の立場が悪くなる可能性もあるのではないか。。
まるで、きこえない俳優を人質に取られているみたい……と、ふと思った。
とはいえ、俳優を応援したいという気持ちと、内容を理解して楽しみたい気持ちは別物だ。
きこえない俳優が、サポートのない劇団で活動しているのは、純粋に凄いと思う。聴者俳優の何倍もの気力、労力を使って活動しているはず。
きこえない当事者が俳優として関わっているからこそ、きこえない観客もその作品を観に行く。
劇団側も、自分たちの演劇の魅力を、内容を「伝える」ということを真摯に検討して欲しい。
対応する方法はいくらでもあるのだし、せっかく一番きこえない観客のことを知っている当事者が劇団の中にいるのだから。