質問)平成27年1月26日提出

答弁)平成27年2月3日受領



1972年の沖縄返還時の原状回復補償費の肩代わりに係る密約についての外交文書に関する質問主意書


2009年9月16日、当時の鳩山由紀夫内閣における岡田克也外務大臣は、以下の四点に関し、いわゆる密約があったと言われていることにつき、外務省において「いわゆる『密約』問題に関する有識者委員会」(以下、「委員会」という。)を立ち上げ、同年11月末を目処にその存在の有無を徹底調査する旨の大臣命令を同省に出したと承知する。


① 1960年1月の安保条約改定時の、核持ち込みに関する密約

② 同じく、朝鮮半島有事の際の戦闘作戦行動に関する密約

③ 1972年の沖縄返還時の、有事の際の核持ち込みに関する密約

④ 同じく、原状回復補償費の肩代わりに関する密約


そして2010年3月9日、岡田大臣は、「委員会」の調査結果をまとめた報告書(以下、「報告書」という。)を公表した。

「報告書」には、④に関し、以下の記述がなされている。


第五章 沖縄返還と原状回復補償費の肩代わり

(一)米国側は、愛知大臣の書簡を求めるが、愛知大臣は、これを見合わせた。

(二)東京では、交渉当事者間で大臣書簡案に代わるオプションとして、吉野とスナイダーによるイニシャルを前提とした「議論の要約」を作成することで合意し、愛知の帰国前日の十二日に吉野とスナイダーがイニシャルしたものと考えられる。

(三)米側資料によれば、六月十二日の最終協議において、「署名による書簡」とするか、あるいは「交渉経緯(記録)」とするかが議論となり、井川、吉野両局長ら日本側の交渉当事者は二分されたという。吉野は交渉経緯の全体に言及することを避けるため、両者を混ぜ合わせた「議論の要約」を作成し、米側の要望に応えることを提案したようである。

(四)日本側の不公表書簡案(大臣書簡案)にせよ「議論の要約」にせよ、それ自体は、両国政府を拘束するような内容ではなく、両政府間の秘密の合意や了解を意味する「密約」にあたるわけではない。(「狭義の密約」ではない。)

(五)原状回復補償費の肩代わり合意と三億二千万ドルへの積み増し了解は、非公表扱いとされ、明確に文書化されているわけでもなく、返還協定や関連取り決めにも明記されていないものであるが、両国政府の財政処理を制約するものとなる。その点では、これらは序論に定義された「広義の密約」に該当する。


そして、本年1月15日に外務省が公開した外交文書(以下「文書」とする。)には、当時外務省が牛場信彦駐米大使に対し、④を否定するよう求めた内容が記されている。また、米側にも「一切知らないとのラインで応答されたく、国務省に対し強く申し入れおきありたい」と要請していたことが明らかにされている。

右を踏まえ、以下質問する。



質問1) 「文書」に対する外務省の見解如何。右の内容は事実か。


答弁)  外交記録公開については、外交記録が、国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることに鑑み、作成又は取得から30年以上が経過した行政文書は公開するとの原則の下、外務省が保有する行政文書であって、作成又は取得から30年以上経過したもの及び保存期間が満了したもののうち歴史資料として重要なものを外務省大臣官房総務課外交史料館に移管し、一般に公開しているものであり、お尋ねの文書に記載された事実関係については、外務省としてコメントすることは差し控えたい。


質問2) 「委員会」としても、外務省、政府としても、④の密約があったことを明確に認めている。しかし、過去に鈴木宗男元衆議院議員が提出した質問主意書に対する政府答弁書では、④の密約の存在を明確に否定し、小泉純一郎、第一次安倍晋三、福田康夫、麻生太郎各内閣においては、④の密約はなかったとの虚偽の答弁が繰り返されてきた。特に、第一次安倍内閣の時に閣議決定された政府答弁書(例えば内閣衆質166第15号、232号、233号、234号、420号、468号、472号)では、④の密約に関し「沖縄返還に際する支払に関する日米間の合意は、第67回国会における琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定(昭和47年条約第2号。以下「沖縄返還協定」という。)についての審議が行われた当時から歴代の外務大臣等が一貫して繰り返し説明しているとおり、沖縄返還協定がすべてであって、外務省としては、御指摘の調査等をする必要はないと考えている。」との答弁がなされている。安倍晋三内閣総理大臣として、現時点においても、かつて自身の内閣の下で閣議により決定した右の答弁と同じ認識を有しているか。


答弁)  お尋ねについては、先の答弁書(平成25年11月5日内閣衆質185第37号)1から5までについてでお答えしたとおりである。


質問3) 安倍内閣として、過去に「文書」の内容と全く異なる虚偽の答弁を繰り返していたことに対し、現在どのような認識を有しているのか説明されたい。


答弁)  お尋ねについては、先の答弁書(平成25年11月5日内閣衆質185第37号)1から5までについてでお答えしたとおりである。


質問4) 安倍内閣として、「文書」の内容を踏まえ、今後④の密約に関し追加的な調査を行い、国民に更なる情報開示を図る考えはあるか。


答弁)  お尋ねについては、先の答弁書(平成25年11月5日内閣衆質185第37号)1から5までについてでお答えしたとおりである。